第13話 休みの終わり
家についてから5日間、お父さんとは領地の話を、母さんとは学園での話を主に、そして弟とは久しぶりに訓練をすることが出来た。
「ケルス、そろそろ馬車が来るぞ」
「はい、準備は整ってます」
「兄様、明日朝に出発でも間に合うのに・・・」
「ほーら、ダーディ。ケルスを困らせちゃだめじゃない? 魔物が最近出るのよ? どんな凶暴なのが出るか分からないし、なにか事故があって遅れたら大変でしょ」
「・・・はい」
「道中気をつけろ。魔物もそうだが、最近は町によく亜人が現れるらしい。別に悪い事ではないが、用心をしすぎて困る事はない。いいな?」
「はい」
「お待たせいたしました。旦那様」
馬車の中には帰りにお世話になった御者とホルン、そして新たしい護衛が一人いた。
「あぁ、息子をたのんだぞ?」
「はい、ご安心ください。魔物の噂もここ最近聞かなくなりましたので、大丈夫かとは思いますが、護衛を二人にいたしました」
「兄様、道中お気をつけください」
「ケルス、ちゃんと学園で上位をめざすのよ?」
「気をつけていきなさい」
「はい」
別れを惜しみながら馬車に乗り、遠ざかる家族を見つめる。
「行ってしまわれましたね。兄様」
「そうね」
「ただ学園に戻るだけだ。何もあるまい」
「そういえばダーディ? ケルスがこの前連れてきたペット。本当にあなたがお世話するの?」
「はい!」
「それならいいけど、ケルスが持ってきたペットって種族はなんなのかしら? つれてきた時は毛皮が黒に見えたけど今朝見たら白くなっていたけど」
「可愛ければいいじゃないですか!」
「それもそうね」
家族に紹介する時に、さすがに魔獣といいづらく、その後染料をつかってランの毛皮をこっそりと真っ白に染め上げて、ずいぶん雑ではあるがウザギっぽくしようとした啓の苦労を知る者はだれもいなかった。もちろんイェンフォウに数多く生息しているウサギとは色以外に酷似している特長は一切なかったが。
それから二日後、馬車は魔物などに一切会うことなく、予定通り学園についた。
『せっかく護衛二人にしてもらったのにな』
『備えって言うのは、使わないのが一番いいんだよ、啓の世界でもそうだろ?』
『ごもっとも』