正統継承者
『お前に我等が扱えるかな⁉』
親父と妖との距離はおよそ10m。さっき結界を破られたときに下がったが妖にすれば一瞬で詰めることが出来る距離だ。
親父には、とっさに張った弱い結界が1つだけ。
2~3発の攻撃で破れるくらいの強度。
妖の体長はおよそ3m。鋭い牙と爪。見た目は赤く、獅子に似ている。
俺と親父の距離は20m。
(早く我等を呼び出せ!親父が死ぬぞ!)
あぁ、そうだった。
落ち着け……俺、落ち着け!
契約した今ならこいつ等が何なのかわかる。
「汝、月読に仕えし闇夜の守護神、紫月!
汝、天照大神に仕えし光の守護神、緑陽!
我に守護の力をかせ!」
いきなり紫の炎と緑の炎が胸から飛び出して紫の炎……紫月が一迅の風の如く駆けていった。
間に合えーーー!!!
親父の結界が破れ体を妖の爪が切り裂く瞬間、
風の如き紫月が妖の首元に喰らい付き、そのまま10mくらい放り投げた。
いきなり横から来た紫月に妖は反応しきれずにあっさりと綺麗な放物線を描いて宙を舞った。
『ふっ、お前如き低級な妖に好き勝手にはやらせねぇよ!
しっかし、シャバに出たのは何百年ぶりだ?』
紫月はおよそ5mくらいの紫色の狼だった。
ケルベロスと同じくらいな大きさで
少しケルベロスよりは細い体つきだ。
例えるなら、ケルベロスが土佐犬で紫月が柴犬って感じだ。
親父をあれだけ押していた妖を前にしても、紫月は余裕の笑みを浮かべ楽しそうだ。
妖と紫月とでは格が違い過ぎる!
そして…カッコいい!
しかし…
『おい!34代目、早くお前の使鬼神も出せ!』
いくら、召喚出来るくらいの力があるとしても、流石に修業を始めて6年目の霊力なんていつまでもつか俺自身も分からない。
「あ、あぁ、 我に仇名す者を葬れ、死をも司りし地獄の番犬 ケルベロス!」
おそらく、親父は使鬼神を召喚する間もなくいきなり襲われたんだろう。
しかし、ケルベロスを召喚してしまえば勝ったも同然だ。
紫月と同じく、格が違い過ぎる!
『やっとお呼びかな?クックック、ずいぶんとやられたものだな龍夫よ』
やはりこちらも余裕の表情で楽しんでいる。
しかし、いつ見てもケルベロスはカッコいいな。
完全にこちらの形成逆転だ。
「うるさい!早くあいつをやれ!」
親父も大分やられていたので霊力も体力もそんなに残っていないらしく、召喚するだけキツそうだ。
そりゃ、使鬼神も無しに人間が妖と戦えばそうなっても仕方ない。むしろ、不意打ちをくらって生きているだけでも凄い。
『ふっ、あんな雑魚、造作もないわ!
冥土の土産に良い物を見せてやろう。
喰らえ、断頭 !』
その巨体からは想像出来ないほどの俊敏な動きでその鉈のような爪を使い文字通り頭を切断した。
溢れる鮮血。
あれだけ強大な妖気が一瞬で散った。
『グガァァァォ、何故だ……何故、私が死ななければならないのだあぁぁ!』
体はそのまま動かなくなったが頭は断末魔の叫びをあげた。
暫く生きていそうだった。
……しかし、ケルベロスに踏み潰された。
受験勉強があるので、たまにしか更新できませんが、これからもよろしくお願いします!