力の意味
俺は紫と緑の眩い光に包まれた……。
「……うっ、ここはどこだ?確か俺は……神社の境内にいて親父が妖に襲われてて……」
俺は周りを見渡したが、真っ暗で何も見えない。一筋の光も無い完全な闇。
『智樹…智樹、こっちです』
後ろから女のような声が聞こえて振り向いてみると、闇の中にぼぅっと紫の炎と緑の炎が並んで浮かんでいた。
『智樹……』
俺を呼んでいた声の主は緑の炎らしい。
「何故、俺の名前を知っている。ここはどこだ?」
俺は警戒しつつ聞いてみた。しかし、こいつらからは怪しい気配は感じない。
『安心して下さい。ここは、彼方のいた次元とは別の次元です。父上殿もご無事です』
「本当……なのか?」
俺はこいつ等を信用してもいいのか?
『はい。本当です。でも、あの妖を倒したわけではありません。あくまで、時間の流れる速さが違うだけです』
緑の炎の話しを聞いた結果、ここで数時間話していたとしても、もとの次元では、0.1秒程しかたっていないらしい。
『あまりここに人間が長居をしてはいけません。ここは人間が入り込んではいけない領域、神の領域に近い次元です』
何故、俺がそんなところに?
『では、お前にもう一度問おう』
突然、今まで沈黙を貫いていた紫の炎が沈黙を破った。
……俺はこの声に聞き覚えがある。……夢に出て来た紫の神獣の声だ。
『智樹よ、お前は何を望む。お前は何を欲し何を求む』
今なら俺はこいつの言葉の意味がわかる。
「俺は……俺は、力が欲しい!」
『何故だ?何故、そんなにも力を求める?』
「俺は、俺の大切な人たちを守りたい。そのために、力が欲しい。」
俺は、もう嫌なんだ。
俺の大切な人たちを俺のせいで失いたくは無いんだ!
俺は忘れていた、力は敵を倒すものじゃ無い、大切な人たちを守るためのものだ!
『……ふっ、正解だ。力とは大切な者を守るためのものだ。
しかし、それで良いのか、この力を使えば世界を救えるやもしれぬぞ。
お前は助けられるやもしれぬ者を見捨てるのか?』
確かに、こいつ等の力があれば多くの者を助けられるかもしれない、だけど、
「1人の人間が世界を、全ての者を助けるなんてことは不可能だ。
そんなものはただの傲慢だ!
だから、俺は自分のできる限りのことをするだけだ!」
これで力になってもらえずとも別にいい。
俺は俺にできることをするだけだ。
『……ふっ、合格だ。しかし、1つだけ肝に命じておけ。大切な者を守るには自分の命がなくてはならないということをな』
大切な者を守る。それは自分の命があってこそだ。それに、自分を助けたせいで死なれるのは、辛い。
『では、契約を』
俺は霊力を高め、契約の呪文を唱えた。
「我に忠誠を誓いし神獣たちよ、我と契りをかわせ!」
神獣たちが胸に吸い込まれた。そして、闇が吹き飛んだ。
『お前に我等が扱えるかな⁉』
このような作品ですが、楽しんで読んで頂けたら幸いです。感想をお待ちしてます。