第43話「秋の実りと小さな感謝」
グリーンヴェイル村では秋の収穫祭の準備が始まっていた。リリィは両親と共に、畑で最後の収穫作業に励んでいる。
リリィは小さな手で大きなカボチャを抱え上げようとするが、重くてうまく持ち上げられない。
「リリィ、気をつけて!」
テラが駆け寄り、娘を助ける。リリィは少し悔しそうな表情を浮かべる。
「パパ、私もみんなの役に立ちたいのに……」
テラは優しく微笑み、リリィの頭を撫でる。
「リリィは十分役に立っているよ。ほら、見てごらん」
テラはリリィが収穫したニンジンとサツマイモの山を指さす。小さいながらも、たくさんの野菜が積み上げられている。
その日の夕方、村の広場で収穫祭の準備会が開かれた。リリィは両親と一緒に参加し、村人たちが協力して祭りの準備をする様子を見守る。
アルドゥス村長が、みんなの前で話し始める。
「今年も豊作に恵まれ、本当に感謝です。これも皆さんの努力の賜物です」
村長の言葉に、村人たちは頷きながら拍手を送る。リリィも小さな手をパチパチと叩く。
準備会が終わり、帰り道。リリィは両親に尋ねる。
「ねえ、私たちの畑の野菜って、村のみんなの役に立つの?」
フローラが優しく答える。
「もちろんよ。私たちの野菜は、村の人たちの食卓を豊かにするの。それに、余った分は都会にも届けられるのよ」
リリィは目を輝かせる。
「へぇ、すごい! 私たちの野菜が、知らない人の役にも立つんだね」
テラが付け加える。
「そうだよ。だから、一つ一つの野菜を大切に育てることが大事なんだ」
その夜、リリィは眠る前に、今日見た景色を思い出していた。畑いっぱいに広がる野菜たち。村人たちの笑顔。そして、自分の小さな手で収穫した野菜たち。
突然、リリィは小さな幸せに気づく。自分の努力が、誰かの笑顔につながっているという事実。それは、とても小さいけれど、確かな幸せだった。
「明日も、頑張ろう」
リリィはそうつぶやきながら、幸せな気持ちで眠りについた。




