第42話「お菓子作りと甘い幸せ」
グリーンヴェイル村では秋の味覚を楽しむお菓子作り教室が開かれることになった。リリィは、エマとハナと一緒に参加することにした。
「今日は何を作るんだろう?」
リリィは期待に胸を膨らませながら、村の公民館に向かった。
お菓子作り教室では、秋の味覚であるリンゴとカボチャを使ったお菓子を作ることになった。エプロンを身につけ、三つ編みにした髪を可愛らしくまとめたリリィは、何だかお菓子の妖精になったような気分だった。
「まずはリンゴのタルトから始めましょう」
講師の先生の説明に、リリィは真剣に耳を傾けた。生地を丁寧に伸ばし、リンゴを薄く切り、きれいに並べていく。その作業に没頭する中で、リリィは料理の楽しさを存分に味わっていた。
「リリィちゃん、上手だね!」
隣で作業をしていたエマが感心したように言う。リリィは照れくさそうに微笑んだ。
次に作ったのは、かぼちゃのプリン。材料を混ぜ、型に流し入れる作業は、まるで魔法をかけているみたいで楽しかった。
オーブンからタルトが焼きあがると、甘い香りが部屋中に広がった。リリィは思わず目を閉じて、その香りを深く吸い込んだ。
「わあ、おいしそう!」
完成したお菓子を前に、みんなで歓声を上げた。リリィは自分で作ったタルトとプリンを丁寧に包み、大切そうに持ち帰った。
家に帰ると、リリィは両親にお菓子を振る舞った。
「リリィ、これ本当に美味しいわ」
フローラが感動したように言う。テラも頷きながら、
「うちの娘は料理の才能もあるみたいだな」
と、誇らしげに言った。
その夜、リリィは自分で作ったプリンを一口食べた。甘くてなめらかな味わいに、思わず目を見開いた。
「こんなに美味しいものを作れるなんて……」
リリィは女の子としての新しい才能を発見した喜びに、胸がいっぱいになった。お菓子作りの楽しさ、完成品を家族に振る舞う幸せ、そして自分の作ったものを味わう満足感。すべてが女の子としての幸せそのものだった。
ベッドに横たわりながら、リリィは今日の体験を何度も思い返した。明日は友達にもお裾分けしよう。そう考えると、また新しい幸せが広がっていくような気がして、心が躍るのを感じた。




