第30話「リリィのガールズパーティー」
初夏の爽やかな風が吹く土曜日、リリィの家は普段にない賑わいを見せていました。今日は、リリィが初めて友達を招いてのお泊まり会。エマをはじめ、村の女の子たちが次々とやってきます。
「みんな、よく来てくれたわ」
フローラが温かく出迎えます。
「リリィ、お友達が来たわよ」
フローラの呼びかけに、リリィは階段を駆け降りてきました。
「エマ! みんな! 待ってたよ」
リリィの顔には、期待に満ちた笑顔が広がっています。
「リリィ、おじゃまするね。楽しみだな~」
エマが嬉しそうに応えます。
みんなでリリィの部屋に荷物を置くと、早速パーティーの準備が始まりました。
「ねえねえ、みんなでドールハウス作ろうよ」
リリィが提案します。
「いいね! 私、小さな家具作るの得意なんだ」
エマが目を輝かせて答えます。
他の女の子たちも賛成し、ドールハウス作りが始まりました。
「私、カーテンとか小さな布のものを作るの好きなの」
長い黒髪が特徴的なミカが、小さな布切れを手に取ります。
「あ、じゃあ私はお庭を作ってみようかな。小さなお花とか、かわいいよね」
そばかすがチャームポイントのハナが、色とりどりの紙を選びます。
「わたし、家具の配置を考えるの得意! みんなで相談しながら決めよう」
しっかり者のユキが、ノートを取り出して家の間取りを描き始めます。
みんなで協力しながら、小さな夢の家が少しずつ形になっていきます。リリィは友達それぞれの個性や得意分野に驚きながら、楽しく作業を進めていきました。
「ねえねえ、このお人形の髪型、どうしよう?」
リリィが小さなお人形を手に持ち、みんなに相談します。
「編み込みはどう? リリィの髪も編んであげるから、お人形と同じ髪型にしちゃおう!」
エマが楽しそうに提案しました。
「わぁ、いいね! じゃあ、みんなも順番に編んであげる?」
ミカが嬉しそうに手を挙げます。
そうして、ドールハウス作りの合間に、女の子たちは順番に髪を編みあったり、おしゃれを楽しんだりしました。部屋には楽しい笑い声が響き、女の子たちの絆が深まっていきます。
夕方になり、フローラが部屋をノックしました。
「みんな、そろそろお夕食の準備をしましょう」
「わぁい! お料理、手伝わせて!」
ハナが嬉しそうに飛び跳ねます。
「そうね、みんなで楽しく作りましょう」
フローラの優しい笑顔に、女の子たちは大喜びで台所に向かいました。
キッチンでは、テラがすでにエプロンを着けて待っていました。
「さあ、今夜のメニューは手作りピザだ。みんなで具を選んで、世界に一つだけのピザを作ろう」
「やったー!」
女の子たちの歓声が上がります。
リリィとエマはトマトソースを塗る係、ミカとハナはチーズをのせる係、ユキは具材を切る係を担当しました。みんなで協力しながら、楽しくピザ作りが進んでいきます。
「ねえねえ、このピザにパイナップル乗せてみない?」
ハナが冷蔵庫から缶詰を取り出しました。
「え? パイナップル? ピザに果物なんて変じゃない?」
ユキが首をかしげます。
「でも、甘くて酸っぱい味がチーズと合うんだよ。一度食べたことあるんだ」
ハナが得意げに説明します。
「へぇ、面白そう! じゃあ、一枚はパイナップルピザにしてみよう」
リリィが提案し、みんなで新しい味に挑戦することになりました。
オーブンからピザが焼きあがると、部屋中に香ばしい匂いが広がります。
「いい匂い! 早く食べたーい」
エマがお腹を鳴らします。
テーブルいっぱいに並べられたピザを前に、女の子たちは目を輝かせていました。
「いただきまーす!」
みんなで声を合わせて、楽しい夕食会が始まりました。
「わぁ、このパイナップルピザ、意外とおいしい!」
ユキが驚いた様子で言います。
「でしょ? 甘さと塩味が絶妙なんだよね」
ハナが得意げに微笑みます。
「リリィ、このトマトソース、すっごくおいしいね。秘訣があるの?」
エマが感心した様子で尋ねます。
「ありがとう! 実はね、ママから教わった秘密のハーブをちょっと入れてるんだ」
リリィは嬉しそうに答えました。
食事の後は、みんなで後片付けをします。
キッチンには楽しそうなおしゃべりと笑い声が響きました。
「さあ、お風呂の準備ができたわよ」
フローラが声をかけます。
「やったー! みんなでお風呂だー!」
ミカが嬉しそうに飛び跳ねます。
大きな浴槽に入ると、女の子たちは楽しそうにはしゃぎ始めました。湯気の立ち込める中、歓声と笑い声が響き渡ります。
「わぁ! お風呂広いね!」
エマが両手を広げて感嘆の声を上げました。
「ねえねえ、みんなで肩を組んで輪になろうよ」
ミカが提案し、女の子たちは円になって肩を組みます。
「せーの!」
リリィの掛け声と共に、みんなで円を回し始めました。お湯がざばーんと波打ち、キャッキャッという歓声が上がります。
「あ! 顔にお湯がかかっちゃった」
ハナが目をこすりながら笑います。
そんな中、リリィはふといたずらを思いつきました。
そっとシャワーを手に取り、エマに向けてひょいっと水をかけます。
「きゃっ! 冷たい!」
エマが驚いて声を上げます。
「もう、リリィったら! 今度は私の番よ!」
エマも負けじとシャワーを奪い取り、今度はリリィに水をかけ返します。
「きゃはは! やめてー」
リリィが笑いながら逃げ回ります。
他の女の子たちも加わり、あっという間に楽しい水かけ合戦が始まりました。
「みんな、そんなに騒いじゃダメよ」
フローラの優しい注意の声が聞こえましたが、その口調には笑みが含まれているようでした。
「「「「はーい、ごめんなさーい」」」」
女の子たちは口々に返事をしますが、くすくすと笑い合っています。
「ねえ、背中流しっこしよう」
ユキが提案し、みんなで背中を流し合うことになりました。
「リリィちゃん、背中にお山を描いちゃお!」
ミカがリリィの背中に泡で絵を描き始めます。
「くすぐったいよー」
リリィが笑いながらもじもじします。
お湯の中で足をばたつかせたり、泡で顔に髭を作ったり、みんなで遊びを考え出しては楽しんでいきます。時間が経つのも忘れて、女の子たちは夢中になってはしゃいでいました。
「あー、おもしろーい」
ハナがため息をつきながら湯船に身を沈めます。
「うん、本当に楽しいね」
リリィも幸せそうに頷きました。
「ねえねえ、シャンプーハット乗せっこしよう!」
エマが提案します。
「いいね! 誰が一番高く積めるかな?」
リリィも乗り気です。
女の子たちは次々とシャンプーハットを頭に乗せていきます。泡だらけになりながらも、みんな楽しそうに笑っています。
「あ、ミカちゃんも背中流してあげるね」
ハナがやさしく声をかけます。
「ありがとう。じゃあ、私もハナちゃんの背中流すね」
お互いに背中を流し合う女の子たち。その姿に、リリィは心温まる思いがしました。
お風呂から上がると、みんなでパジャマに着替えます。
「リリィちゃん、そのパジャマかわいい!」
ユキが感嘆の声を上げます。
「ありがとう。これ、おばあちゃんが作ってくれたんだ」
リリィは少し照れくさそうに答えました。
パジャマ姿でリリィの部屋に戻ると、フローラが温かいココアを持ってきてくれました。
「さあ、おやすみ前のお楽しみよ」
「わぁい、ありがとうママ!」
リリィが嬉しそうに声を上げます。
ココアを飲みながら、女の子たちはおしゃべりに花を咲かせます。やがて、フローラが部屋を出て行き、いよいよ就寝の時間。でも、女の子たちの夜はまだ始まったばかりでした。
「ねえねえ、みんなで川の字になって寝よう」
エマが提案します。
「いいね! 真ん中はリリィちゃんで」
ミカが賛成します。
ベッドに並んで横になった女の子たち。部屋の明かりを消し、小さな豆電球だけをつけて、秘密の女子トークが始まりました。
「ねえ、みんなは将来どんな人になりたい?」
ユキがそっと尋ねます。
「わたしはね、動物のお医者さんになりたいの」
ハナが小さな声で答えました。
「すごい! きっと素敵なお医者さんになれるよ」
リリィが励まします。
「私は……」
エマが少し躊躇しながら話し始めます。
「実は、歌手になりたいんだ。でも、恥ずかしくて誰にも言えなくて……」
「えー! そうだったの? エマの歌、聴いてみたい!」
ミカが目を輝かせます。
「じゃあ、明日の朝、みんなの前で歌ってよ」
リリィが優しく提案しました。
「う、うん。頑張ってみる……」
エマは少し緊張した様子でしたが、嬉しそうに頷きました。
「リリィは? どんな夢があるの?」
ユキが尋ねます。
「えっと……」
リリィは少し考え込みます。
前世の記憶と現在の思いが交錯する中、彼女はゆっくりと口を開きました。
「私はね、この村をもっと素敵な場所にしたいんだ。みんなが笑顔で暮らせる、自然豊かな村……だってここでの毎日があたし最高に幸せだから」
リリィの言葉に、みんなが静かに耳を傾けます。
「それって、村長さんみたいだね」
ミカがくすくすと笑います。
「そうかも。でも、村長さんってわけじゃなくて、みんなで力を合わせて作っていきたいな」
リリィの目には、強い決意の光が宿っています。
「すごいね、リリィ。私も協力するよ!」
エマが元気よく言いました。
「私たちも!」
他の女の子たちも賛同の声を上げます。
話は尽きることなく続き、やがて星座の話になりました。
「ねえ、窓から星空見えるかな?」
ハナが提案します。
そっとカーテンを開けると、満天の星空が広がっていました。
「わぁ、きれい……」
女の子たちの感嘆の声が漏れます。
「あれ、流れ星!」
ユキが小さく叫びます。
「みんなで願い事しよう」
リリィの提案に、全員が目を閉じて静かに願いを込めました。
星空を眺めながら、女の子たちは少しずつ眠りに落ちていきます。最後まで起きていたリリィは、友達の寝顔を見ながらつぶやきました。
「みんな、ありがとう。素敵な思い出ができたわ」
そして、リリィも幸せな気持ちで目を閉じました。
窓の外では、まるで女の子たちの夢を見守るかのように、星たちが静かに瞬いていました。




