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終奏…漆

「命が生まれる春。命が育つ夏。命が散る秋。そして、命が継がれる冬」

 春の訪れを告げる桜。夏の到来を知らせる若葉。秋の深まりを語る桔梗。冬の始まりを示す時雨。

「なぁ、四季。季節とは、命そのものだったんだな」

 立ち尽くしたまま動かない四季と六花の髪や肩にも雪は積もっていく。

 命を眠りへと誘う六花は、この場所に立ち続ける二人までをもその懐に抱こうというのだろうか。

「俺達は、その命の欠片そのものだったんだな」

 世界を構成した要素の一部を封じ込めてしまった存在。それを、誰かが罪だと言った。

 そして、その誰か以外の誰かが、世界の命なのだと言った。

 四季は振り返る。揺れた長髪から粉雪が零れ落ちた。

「世界に命を返した私達は、ただの人間になった」

 箱庭はもうない。

「綺麗な黒髪だ」

 世界の欠片の証としての銀ではなく、一人の人間としての印の色を宿す四季の髪を、六花はそっと撫でる。その手が離れると同時に、四季は歩き出していた。

「行こう、六花」

「何処へ?」

「何処へでも。ここはもう、私達の世界だ」

 箱庭のあった場所を後にする四季の背を、笑った六花は追う。

 冬は始まったばかりだ。墓前に供える桜花が咲くのは、今しばらく後の事となろう。

 命の砂が零れ落ちていく音はもう、聞こえない。






 終劇

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