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終奏…伍

 雪景色の中にそれでも覗いていた色は今、消えゆこうとしている。溢れていた多くの命は天使の歌声に導かれて眠りへと落ち、彩りを失った世界はやがて、この優しいゆりかごが消える頃、再び目を覚ます。

 冬が、来たのだ。

「ああ。そうだよ、今は冬だ。――四季」

 背後から名前を呼ばれる。いつも、そうだったように。

 ならば、その口元に刻まれた笑みもまた、彼が見ることはないだろう。

「なんとも、不思議な感覚だ。窓から眺めていた世界はいつも、様々な色で満たされていたものを」

「ああ。俺の世界も、この前まではそうだったさ」

 桜、若葉、桔梗、時雨。

 春夏秋冬が日で、或いは時間単位で入れ替わる。ありとあらゆる色が混在する、矛盾した、混沌とした世界。その世界を美しいと思った心は今、秩序を取り戻した時間を見て、変わり始めている。

 本当の美しさは、最後の欠片を取り戻してこそ、存在する。

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