44/47
終奏…参
「――六花」
背中に感じる温もりを呼ぶ。
冬の空から降ってくる、この銀の華と同じ名を持つ彼を。
「世界は確かに、美しい」
彼は覚えているだろうか。
かつて、ここに存在した箱庭の中で、チェス盤を挟みながら交わされた会話の内容を。
そう考える片隅で、答えを知っている己がいる。覚えていると、確信している自分がいるのを、知っていた。
耳元に落とされた小さな笑み。
「答えが、出たな」
あの時とは紡ぐ言葉が入れ替わっている。零した笑みは、その可笑しさに対するものだったのか。或いは、彼と感覚を分かち合えた事に対する喜びを表すものだったのか。




