表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/47

儚奏…拾弐

 浮かべられていた透明な微笑みは消えて、顔を歪めた時雨の伸ばされた腕が四季を包み込む。

「四季…。ごめんなさい…」

 耳元で囁かれる声音に、笑い声の方が好きだと、四季は思う。

 抱き締めてきた時雨の背に腕を回す。そっと抱き締め返せば、その肩が僅かに震えた。

「貴女を独り、残してしまう」

 頬に落ちる雫がある。

 窓硝子を叩く雨粒がある。

 天使は子守唄を歌うことに飽きて、綺麗な歌声をもっと聴きたいと乞う天が泣いている。

 彼女の白い頬を縁取る黒髪を焼き付けた銀の双眸を細め、四季は宥めるようにその背を叩いた。

「――おめでとう、時雨」

 謝罪など必要ないのだ。

 泣き続ける時雨の耳元で囁けば、息を呑む音が聞こえる。腕を外せば自然と二人の体は離れ、見上げた先で出会った驚きの黒の瞳に四季は微笑む。

 伸ばした手でそっと、眦に浮かんだ涙を拭ってやれば、やっと彼女はあの透明な微笑を取り戻した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ