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儚奏…捌

 零れ落ちた僅かな笑み。

「――チェックメイト」

 それは果たして、ただ確信した勝利へのものに過ぎなかったのか。

 或いは、託された約束を受け入れるものだったのか。

「あ――・・・。どうして勝てないかな」

 六花はその真意を確かめようとはしなかった。必要がなかったからだ。

 いつかの未来で、自ずと答えは出る。

「精進」

 盤上の遊戯は終わりを告げた。華麗なるダンスを披露してくれた駒を慣れた手付きで片付けながら、いつか紡いだ言葉を落とす。

 その時向かい合わせに座っていたのは、彼ではなかったけれど。

「結局、誰もお前には勝てないのかな」

 不貞腐れたような声が立ち上がった四季を追ってくる。含んだ水分がそれでなくなるわけではないが、何となくという理由で身に纏う白服を払う四季は、否、と首を横に振る。

「一人」

 脳裏に浮かぶ光景がある。

 チェックメイト、と。キングの逃げ道を完全に塞いだ時の得意げな笑みが、印象的だった。

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