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儚奏…陸
「俺はやっと、死を見て流される涙の理由を知った」
箱庭の中の欠片達は知っていた。
残していくそれ等が、幸せだった事を。だから、死というものを恐れることも、哀しむこともなかった。
けれど、欠片達は同時に知らなかった。
世界はどんなに美しく、そしてそれを共に見たいと、願っている心があった事を。
銀の双眸が数回、ゆっくりと瞬かれる。それは捉えた彼の言葉を咀嚼しているようでもあり、何も考えていないようにも見えた。決して感情を表さない無に、黒い瞳で見つめる彼は何を見出すのだろう。
「…私には、六花。君の感覚が理解出来ない」
彼の知っている事を、自分は知らない。
想像も出来ない世界に、彼はいる。
黒と白。その決定的な違いを、されど四季は哀しいとは思わなかった。




