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花奏…肆
伸ばした手を、止めたのは。
「――四季」
窓辺に佇んでいた彼が振り返る。流れたその髪の色を、四季は美しいと思った。
薄く開けられたカーテンの向こうはもう、白銀の世界に誘われ始めている。舞い落ちてくる雪の華にはしゃぐ子供達か。その美しさに懐かしさを覚える大人達か。
この穢れなき世界に、初めて足跡を刻むのは、果たして誰なのだろう。
「雪が降ったよ」
微笑む、それに伴って細められる隻眼の色もまた、この世界にはないものだ。
「答えが出たな」
彼の隣に並んで窓の外を見る。
銀世界に降り積もっていく六花は増えていくばかりだ。厚い雲に覆われた先の空で、天使達はいつまで子守唄を歌い続けるつもりでいるのだろうか。天使の羽が、光彩に包まれていた世界を白一色へと誘っていく。それは、優しさのゆりかごだ。




