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花奏…参
数を増していく雪華を映していた銀の双眸が一度、瞬かれる。それは止まっていた時間を動かす合図で、窓硝子から手を離した四季は再び歩き始める。
見慣れた廊下。馴れてしまった道順。
辿り着いた先の白い扉を、四季は躊躇いもなく開けた。
カーテンの引かれた薄暗い部屋に足を踏み入れる。室内を滑った瞳は、幾ばくの時間も掛けずに彼を探し当てる。
近付いていく。声を掛ける必要がない。
ベッドと、机と、私物が置かれた小さな棚と。その程度の家具しか置かれていない殺風景な部屋は、薄暗くともその白を見る者の網膜に焼き付ける。
穢れなき白。
それを断罪だと、言う者もいる。
世界から剥がれ落ちた欠片であるお前達は、罪人だ。真っ白な世界の中で、その罪の意識に焼かれながら生きるがいい。
何故、この世界が白いのか。
その本当の理由を、知る者はもう、いない。
断罪なのか、慰めなのか。ただ確かな、白という世界を、四季は歩いていく。




