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花奏…弐
白い廊下を歩いていく。左手には硝子窓が嵌められていて、されどこの窓が開け放たれる事は終にないだろう。風を取り入れる事が役目ではない。光を導き、そして、外界との繋がりを断ち切る為だ。
窓の外を桜花が舞っている。
気紛れに歌う風に桔梗の花が揺れている。
季節感のない、春も夏も秋も冬も混在している世界。
「…ん?」
ようやく気付いた。視界の隅を掠めた白い物を視認したから。
陽の光の差し込まない窓に近付く。掌を当てた硝子は冷たくて、外の世界の気温が低い事を教えてくれる。
覗いた空は雲に覆われ、そこから舞い落ちてくるもの。
それが、先程まで舞っていた桜花ではない事など、すぐに知れる。
「雪…?」
空の贈り物。
天使の羽。
「雪…」
色は同じなのに、どうしてこんなにも、孕む感情が違うのだろう。
舞い落ちてくる白い花。その美しさは、思わず見入ってしまう程に。




