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淡奏…参
「さあ、お入りなさい」
促されて入った部屋も、その部屋の入り口のドアも、やはり白だった。
透明硝子によって中央で仕切られた一つの空間。中央にぽつんと置かれている椅子に座ると、硝子の向こう側の扉が開けられた。そこから現れた人物もまた白い服に身を包み、まるで合わせ鏡のようにこちらと全く同じ状態の椅子に腰を下ろした。
二つの扉が閉ざされる。
白い世界に残されたのは、硝子を挟んで向かい合わせに座る四季と白い服を着た大人。
四季が傍らの小さなテーブルに置かれている受話器を取ると、彼もまた倣うようにそれを取った。
『儂を、覚えているかね?四季』
耳に当てた受話器から聞こえてきた、僅かに掠れながらも威厳と優しさに満ちた声の紡いだ問いに、四季は無言で一つ頷く。
初めての面会の相手は、かつて自分が住んでいた村の長を務めていた老人だった。
白髪の頭は綺麗に櫛が入れられ、顎から長く伸びた髭も綺麗に整えられている彼が、一体自分に何の用があるというのだろう。




