表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

第一章3 『初対面の王様は、やっぱり話が通じない』


王宮の門は、思っていたよりもでかかった。

石造りのアーチに金属の装飾、門の向こうには広大な庭園と、衛兵がびしっと整列している。


「うわぁ……マジでファンタジーじゃん……」


連れてきた兵士が「ここで待て」と言い残し、俺は王宮の中庭でしばらく待たされた。日差しは強いけど、風は心地いい。


「……で、俺はここからどうすんの?」


返事はない。

っていうか、なんでこんなに急展開なんだよ。昨日までアイス買ってた俺、どこいった。


「お待たせしました。召喚者様、こちらへ」


やって来たのは、いかにも“宮廷魔術師です”って感じのローブをまとった老人。細い目をして、長いヒゲを撫でている。


「……もしかして、あんたがラスボス?」


「何を申すか。我はこの国の大魔導・ザロフ。陛下の側近である」


「いや、冗談だって……」


俺は軽く頭を下げながら、しぶしぶ城内へ。


通されたのは、巨大な謁見の間。天井が高くて、床がピカピカ。

そしてその奥に――


「よくぞ来た、勇者よ!」


金色の王冠をかぶった中年の男が、豪華な玉座から立ち上がった。


「……あんたが王様?」


「うむ。我が名はレグナス・アルバード。この国――フェルシア王国を治める王だ」


名前、覚えられる気がしないんだけど。


「さて、勇者よ。貴殿にはこの世界を脅かす“闇の魔王”を討つ使命がある!」


「いやいやいやいや、待った待った!」


思わず手を振って止める。


「俺、勇者になる気ゼロなんすけど。帰りたいんです。マジで」


「……帰る、だと?」


王様の顔が固まった。


「そう。俺は高校生だし、バイトもあるし、アニメの続きも気になるし……てか、魔王とか戦うスキルねぇし」


「ふむ……スキルについては問題ない。召喚と同時に、“適応の祝福”が授けられているはずだ」


「適応……? なにそれ、オプションサービス?」


そのとき、ザロフが手をかざした。


「よろしければ、スキル鑑定を行いましょう」


「スキル……鑑定?」


「ええ。貴殿の持つ“能力”を視ることができます。稀に、世界を変えるほどのスキルを持っている者もいますので」


(いや、そんなチート展開ないだろ……俺、ただの高校生だし)


そう思ってた。なのに――


ザロフが手を動かす…すると、俺の前に半透明のパネルが浮かび上がった。


【吉田竜也】

種族:人間


年齢:17


職業:???


スキル:

 - 「帰還願望Lv.MAX」

 - 「拒絶の意志(EX)」

 - 「???」(未解放)


「……なにこれ」


ザロフが眉をひそめる。


「……これは……非常に、珍しいスキル構成ですな」


「“帰還願望Lv.MAX”って何だよ! スキルなの!?」


「おそらく……この世界に“強く帰りたい”という意志が、何らかの形で具現化しているのでしょう」


「意味わかんねぇよ!」


でも、俺の中に――

たしかに“帰る”ことだけは、何より強く願っていた。


そして、“???”という未解放スキル。

これが何なのか、今の俺にはまだわからない。


「……吉田竜也よ。貴殿の意志は理解した」


王様が静かに言った。


「だが、願うだけでは道は開けぬ。この世界のどこかに、元の世界に戻る手段があるかもしれん。それを探すには、まず世界を知ることだ」


「つまり、旅に出ろってことか?」


「うむ。そして……もしこの国に手を貸してくれるなら、我らも貴殿の“帰還”を全力で支援しよう」


一瞬、心が揺れた。

協力すれば、帰れる可能性が上がる?


(けど……どうせ、また勝手に“勇者”って扱って、戦わせようとするんだろ?)


「……考えさせてくれ」


俺はそう言って、王宮を後にした。


異世界に来た理由はわからない。

でも、“帰る”という目的はブレてない。

そして、俺の中の“何か”が、少しずつ動き始めていた。



最後まで読んでくれてありがとうございます!


面白いと思ってくださったら、ぜひ評価やブックマークで応援してくれると励みになります!


感想ももらえたら、めちゃくちゃ嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ