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目を覚ますと知らない風景がそこにはあった。

そこは病院のように見えた。天井にはその建物が古くからあることを示すかのように黄ばみが所々にみられる。少し目線を下げるとカーテン仕切りがあり周りがどんな風になっているかはわからない。

もう少し周りを見ようとするが首を固定されてしまっているかのごく狭い範囲でしか首を動かすことができなかった。周囲の詮索を諦めて次は記憶の中に今の手がかりを探ってみる。

起きる直前の記憶は下校中の記憶だった。

いつものように高校から家に帰っている途中、やけにその日は夕焼けがまぶしかった記憶がある。夏休み前ということもあってその日一日はうだるような暑さだった。いつもなら放課後は図書館によって静かななかでその日の宿題を終わらせることが僕の日課だったがあまりの暑さに少し熱中症気味になってしまったらしい。その日は図書館に行かずにそのまま家に帰ろうとした。暑さもあって少しぼーっとしていて僕は信号が赤であることに気付かなかった。横断歩道の真ん中にいる僕に向かってトラックが....


ガラガラガラガラガラ

「ようやく気付いたかね。」

カーテン仕切りをあけながらベットに近づいてきたのはなんどパンダだった。

トラックにひかれて頭がおかしくなったわけではない。本当にパンダなのだ。

目の前に二足歩行で白衣を着たパンダがいた。しかもそのパンダが僕に話しかけてきた。あまりに体が人の体と同じ体系のためパンダの被り物でもしているのではないかと思っていると

「これは被り物でもなく正真正銘、僕の頭さ」

そういい、白衣の胸の第一ボタンをはずして白衣の中にこれでもかと詰め込まれている黒色の体毛を見せてきた。

「どうだい、これで僕がパンダだって信じてくれるかい」

そういってパンダは口角を上にあげた。

「あの、自分はなんでここにいるんですか?」

かろうじてそう聞くことができた僕をパンダはうんうんと頷きながら答えてくれた。

「君は君がいた世界で死んでこちらの世界に転送されてしまったんだ。」

ん、んん、んんん

頭が追い付かず瞬きがどんどん高速化していく。驚きと戸惑いで言葉が出ずにいる僕にパンダは続けた。

「君のいた世界ではあまり知られていないことかもしれないが、ここの世界ではよくあるこなんだ。月に3人ほどかな。僕みたいな獣人属もいれば君みたいな人型もいる。そして転送場所は毎回決められたいくつかの場所に時期を問わずやってくる。君は先月転送されていたんだ。目を覚まさないから近くにある僕の病院まで運ばれたってことさ」

パンダ先生の説明の全部はさすがに理解できてはいないが僕が死んで別の世界に来てしまったことは分かった。じゃあ僕はあのトラックにひかれて死んだんだな。

「パンダ先生、僕はこれからどうなるんですか?」

何もわからないまま聞いた僕をパンダ先生はまたさっきと同じ口角を上げた、たぶん微笑んでいるその表情で

「僕たちの世界では転送者のことをニューパイロットと呼んでいる。そしてニューパイロットには特別な力を持っていることが多くあり基本的には国で管理することになる。」

「つまり、僕はこれから実験体になったりしながら人とも言えない生活をするんですか?」

混乱に加えネガティブな妄想が止まらず震えながら言う僕の頭をパンダ先生は毛むくじゃらな黒い手で、優しくなでてくれた。

「そうなるケースもある。だけど僕は君にそんなひどい目にあってほしくない。だから僕はこのことはまだ国に黙っている。」

優しく話すパンダ先生の言葉に心が柔らかな気持ちになったがひとつの言葉が引っかかった。


まだ


「まだってことはいつかは話すってことですか?」

起き上がろうとして首が固定されて動かないように全身も固定されており下のベッドからギシギシと音が聞こえるだけだった。

「ああ、君が転送されたことはもう国に知らせが届いてしまっている。だから君がこのままいたらいずれ目覚めたことがばれてしまう。」

「ってことは僕は」

「だから!」

僕の言葉をかき消すほ勢いでパンダ先生は喋った。

「君にはもう一度死んでもらう」

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