68 遺跡へ出発
早朝、俺はローゼルバイトの館を出た。
ついに今日は遺跡探索の日だ。
魔界の扉の手がかりが眠るとされる古代遺跡――。
その探索は、俺自身の没落回避についても、また、この国の未来にとっても重要な意味を持つはずだ。
「行ってくるよ、ルーシア」
玄関で見送ってくれたメイドのルーシアに声をかける。彼女は深々と一礼した。
「お気をつけて、ディオン様」
穏やかな微笑みだが、その瞳には心配の色がにじんでいた。
……いや、それだけじゃない、妙に熱っぽい視線を感じるのは気のせいか?
「大丈夫。必ず戻ってくるよ」
俺は微笑を返し、待たせていた馬車に乗り込んだ。
向かう先は王立学院。
ヴィオラとウェンディとの待ち合わせ場所だ。
馬車に揺られながら、俺は今回の探索について思考を巡らせる。
魔界の扉、【メタシード】、そして【魔創樹セフィロト】。
ゲーム知識だけでは計り知れない要素が多すぎる。
だけど、やるしかない。
この探索で、俺は必ず自分に運命を好転させるための情報をつかんでみせる――。
馬車が王立学院の寮の前に到着した。
「来たか、ディオン。待っていたぞ」
馬車を降りると、そこには既にヴィオラとウェンディの姿があった。
二人とも、いつもの制服姿じゃなかった。
ヴィオラは動きやすそうな軽装鎧に身を包み、腰には剣を下げている。
その立ち姿には王女としての威厳と、冒険への期待感が漂っている。相変わらずの美貌は、今日は一段と凛々しい。
一方のウェンディは、シンプルなローブ姿。
【植物魔法】の使い手として、魔術師らしい格好をしてきたようだ。
ちなみにこのローブ姿はゲーム内でも登場し、彼女の可憐さや知的な雰囲気をより引き立てている。
ウェンディは己の才能への自覚が芽生え始めたのか、以前会った時よりも自信に満ちた表情に見える。
とはいえ、やはり未知の探索への緊張は隠せないらしく、表情にはわずかなこわばりが見て取れた。
「おはよう、ヴィオラ、ウェンディ。待たせてすまなかったな」
「いや、私たちも今来たところだ」
「お、おはようございます、ディオン様!」
ウェンディの植物魔法は、この遺跡攻略の鍵になるかもしれない。
期待したいところだった。
こうして――俺たちはヴィオラが手配した大型の馬車に乗り、遺跡へと出発した。
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