65 ジュリエッタの訪問、そして
数日後、ジュリエッタが訪ねてきた。
どうやら俺が近々行く予定の遺跡探索について、何か心配事でもあるらしい。
応接室に入ると、メイドのルーシアが彼女に応対していた。
「ようこそいらっしゃいました、ジュリエッタ様――」
言いながら、ルーシアは俺をチラチラ見ている。
ん? どうしたんだ?
「下がっていいわよ、ルーシア。私はディオンと二人で話すことがあるから」
と、ジュリエッタが凛とした声で言った。
「……私はお邪魔でしょうか」
ルーシアが、わずかに不安そうな表情になる。
「えっ、同席したいの?」
ジュリエッタは少し驚いた顔をした。
「あ、い、いえ! 申し訳ありません……私ったら」
慌てたように口を両手で押さえるルーシア。
「俺たちの話に興味があったのか?」
「え、えっと、その……いえ、本当になんでもないんです……深刻そうな雰囲気があったので、少し心配になって……」
なるほど、そういうことか。
俺たちが話そうとしていた遺跡探索のこと――その重要性を察して、不安を覚えたんだろう。
「気遣ってくれて感謝するよ」
俺は礼を言って微笑んだ。
「……本当に、そんな理由?」
一方のジュリエッタは不機嫌そうな顔だ。
「あなた、メイドよね? ディオンに対して――」
「ジュリエッタ……?」
俺が訝しげに彼女を見ると、
「……ううん。なんでもない」
今度はジュリエッタがぷいと口をつぐんでしまった。
「では失礼いたします。ごゆっくりどうぞ」
ルーシアは俺たちに一礼して、静かに部屋を出ていく。
二人きりになると、ジュリエッタは不満げな顔のまま、俺に詰め寄ってきた。
「ねえ、あのメイドの娘、あなたに気があるんじゃない?」
「えっ?」
何を言ってるんだ? いきなり。
「ジュリエッタは、俺の周囲の女性をそういう目で見過ぎじゃないか?」
「! ち、違うわよっ! 私、そんな嫉妬深くないし……っ!」
言いながら、ジュリエッタは慌てている。
明らかに動揺しているのが見て取れた。
「嫉妬深く……ない……ううん、もしかしたら……嫉妬深い……かも……」
と、後半は消え入りそうな声でつぶやいている。
「本当に……どうしたんだ、ジュリエッタ?」
俺が聞き返すと、彼女はハッと我に返ったようだ。
「はあ……」
と深いため息をつく。
「ねえ……さっきの私、嫌な態度だった?」
ジュリエッタはしおらしく聞いてきた。
「そんなことはないと思うけど――」
俺が答えると、ジュリエッタは首を横に振った。
「ううん。態度が悪かったと思う。私、ちょっと行ってルーシアに謝ってくる」
そう言って、彼女はすっと立ち上がった。行動が早いな。
「なら、俺も行こうか?」
俺が提案すると、
「……いえ、私だけで」
ジュリエッタはきっぱりと断った。
「……ディオンはそこで待っていて。追いかけてきちゃ、だめよ」
念を押すように、真剣な目で俺を見つめる。
「あ、ああ」
俺に聞かせたくない話でもあるのか?
怪訝に思ったものの、ここは彼女の意思を尊重し、黙って見送ることにした。
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