表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/72

50 主人公ウェンディ・ラミルの学院生活1(ウェンディ視点)

 その日、王立学院の教室で――。


「うわー、すごい!」

「ラミルさん、こんな魔法が使えるんだ?」


 驚きの声が次々に飛び交った。


 注がれる視線に囲まれながら、ウェンディ・ラミルは小さく頷く。


「うん、いい感じで生長したね」


 彼女の前で、大輪の花が咲いている。


 さっきまで萎れていたそれは、今や瑞々しい命に満ち、色鮮やかに花開いていた。


 そう――ウェンディの魔法がそれを生み出したのだ。


 彼女の魔法は【植物魔法】。


 二ヶ月ほど前に、その力が劇的に強まった。


 それまでも、わずかに芽生えてはいたのだが、突然――まるで何かが弾けるようにして力が覚醒した。


 理由は分からない。


 ただ、もしかしたら、そのときに出会った少年――ディオン・ローゼルバイトが、彼女に何らかの力を与えてくれた気がしていた。


 特段の根拠はないのだが、ウェンディはなぜかそれに確信めいたものを感じており、それどころか運命とすら思っていた。


 以来、彼のことが頭から離れない――。


 それはさておき、彼と出会って以来、【植物魔法】は、朽ちかけた花を蘇らせ、果実を甘く実らせ、さらには植物の性質を【変質】させることさえできるようになっていた。


 彼女はその力を平和的に使っている。


 例えばこうして萎れた花を救ったり、果物をより美味しく育てたり。


 そう――彼女にとってこの魔法は、「平和に使うべきもの」だった。


 ……だが。


(分かってる。戦闘にも、軍事にも使える……応用次第で、どれだけでも)


 心のどこかで、彼女はそのことに気づいている。


 この力は――危うさも孕んでいる、と。


 だが、今は。


(今は、これでいいんだ……あたしは、この魔法を――)


 優しく、穏やかに使いたい。


 そう思いながら、咲いた花にそっと触れた。




 昼休み。


 ウェンディは中庭のベンチで、ジュリエッタとヴィオラと話していた。


「【植物魔法】か……随分とレアな魔法を持っているんだな」


 ヴィオラが腕を組みながら感心したように言う。


 彼女はこのグレイス王国の王女であり、平民出身のウェンディからすれば、まさしく雲上人だった。


「ええ、まあ……」


 ウェンディが控えめに答えると、隣のジュリエッタが微笑んだ。


「彼女はその才能を認められて、王立学院に特待生として招かれたのよ、ヴィオラ」


 それを聞いて、ヴィオラがにやっと笑う。


「お前も普通に話してくれていいんだぞ、ウェンディ」

「いえ、姫様にそんな……恐れ多いです」

「姫様はよせ。ここではただの級友だろう」


 気軽な口調の中に、どこか柔らかさがある。


「そう……だね、ヴィオラ様――ヴィオラ、ちゃん」


 ウェンディは少し戸惑いながらも、小さくうなずいた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して
★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!


▼書籍版2巻がKADOKAWAエンターブレイン様から6/30発売です! 全編書き下ろしとなっておりますので、ぜひ!(画像クリックで公式ページに飛べます)▼



ifc7gdbwfoad8i8e1wlug9akh561_vc1_1d1_1xq_1e3fq.jpg

▼なろう版『死亡ルート確定の悪役貴族』はこちら!▼



▼カクヨムでの新作です! ★やフォローで応援いただけると嬉しいです~!▼

敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ