48 ミリィの商業ルート開拓
「どういう意味だ?」
「……まさか、この子の気持ちに全然気づいてないわけじゃないだろうね?」
なぜかクリスティナにジト目で見られた。
「???」
首を傾げる俺。
と、
――ぱかぱかぱかっ。
蹄の音が、農地に響き渡った。
「おーっす! ディオンはん、ただいまやでー!」
砂埃を巻き上げながら、茶色のポニーテールをなびかせた少女が、馬上から大きく手を振ってきた。
その顔には疲れよりも、やり切った笑顔が浮かんでいる。
「ご苦労様、ミリィ」
「へっへっへーん。近隣の商業都市を回ってきたんや。なかなかええ感触やったでぇ」
ミリィは得意げに胸を張った。
上着には旅の汚れ、髪にはホコリ。
それでも彼女の笑顔が輝いて見えるのは、それだけ自信に満ちているからだ。
「クリスティナはんにセレスティアちゃんも。おひさ~」
「しばらくだねぇ」
「こんにちは~っ!」
と、彼女たちは嬉しげに挨拶を交わす。
この三人はワインの特産品開発で顔を合わせる機会がたびたびあるはずだが、どうやら関係は良好なようだ。
「へえ、ぜひ報告を聞かせてくれ」
そう促すと、ミリィは軽やかに馬から飛び降りた。
「試供品を持って、商業都市をいくつか回ってきたんやけどな。三つの商会が、興味を示してたわ」
得意げに語る彼女に、俺は感心した。
「品質とブランドイメージをもうちょい詰めれば、本格的に交渉に移れそうやったで。うちの勘やけど、かなり高う買ってくれそうな雰囲気やったわ」
「期待の新製品っていうふうに、見てもらえてるわけか」
胸が熱くなる。
これはもう、夢物語じゃない。
ちゃんと手応えのある第一歩だ。
「こっちはクリスティナやセレスティアと話して、土壌や栽培の改良と改善について話し合っていたんだ。その辺りのことは君も聞いておいてくれ。それを踏まえて――引き続き商業ルートの開拓を頼む。君ならやれるだろう?」
「当然やろ? うちを誰やと思ってんねん」
期待を込めて見つめると、ミリィは腰に手を当てて満面の笑みを浮かべてみせた。
セレスティアとクリスティナも、その姿に自然と笑顔を浮かべる。
「これで、あとは生産体制を整えていけば……」
「うん。それと、灌漑設備の補修。水路が壊れてて水が漏れてるから、早めに対応しておきたいねぇ」
クリスティナが言った。
「セレスティアの肥料も試験段階やけど、量産体制のことも考えなきゃね~」
「うち、そこも含めて交渉してみるわ。たとえば、研究成果が正式採用されたときの原材料の仕入れルートも押さえに行く」
ミリィには、すでに今後のワイン開発の未来図が頭の中で明確にイメージできているんだろう。
そして、それに基づいた商業ルートの開拓を着々と計画している。
一手一手を考えるのがとにかく早く、そして精力的だ。
それこそ彼女が商才Sであるゆえんなんだろう。
俺が代わりにやっても、こんな風にはいかない。
それはクリスティナやセレスティアの仕事にしても同じこと。
やっぱり適材適所ということだ。
「みんな、引き続き頼むぞ」
俺は頼りになる仲間たちを見つめ、微笑んだ。
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