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47 セレスティアの開発品

 と、そのときだった。


「ディ、ディ、ディオン様っ……! こ、これ、見てくださいっ!」


 ばたばたばたっ。


 あわただしい様子で一人の少女が走ってきた。


 肩のところまでの金髪に紫の瞳をした美少女――錬金術においてSランクの才能を持つ少女セレスティアだ。


「こちらに視察に来ると聞いて、飛んできました!」

「どうしたんだ、セレスティア」


 やけに勢いのある彼女に、俺は軽く目を丸くした。


「どうしても! これを! お見せしたくて!」


 セレスティアは両手で抱えた鉢植えを見せた。


「このブドウ、明らかに成長が早いんです! 昨日植えたばかりなんですが!」

「えっ、半日くらいでこうなったってことか?」

「はい、錬金術を応用して作った新型肥料を試してみたんですが、これ……いけるかもしれません」


 セレスティアは目を輝かせて語る。


「へえ、面白いじゃないか」


 と、クリスティナも歩み寄った。


「あ、クリスティナさんにも見てもらえてよかった! どうですか?」


 と、セレスティア。


「半日で育った……か。その肥料、もっとたくさんのブドウを育てられるだけの分量はあるのかい?」

「まだ……無理です。精製にすごく時間がかかるので」


 と、首を左右に振るセレスティア。


「ただ、これが有用なら量産体制を整えたくて。ディオン様やクリスティナさんに相談したかったんです」

「大量生産して実用化できるなら、ブドウの生産量が劇的に変わるな」

「ただ、いくら早く収穫できても畑の広さは有限だからね。何度も植えるってわけにもいかないし――」


 と、クリスティナ。


「仮にそれをやっても土地が痩せてしまうからね。ただ、その対策までできるなら、早く育てて、また植えて……って形を取ることができる」

「それは――夢のような話だな」


 俺は思わずうなった。


 通常は年に一回の収穫であるワイン用のブドウを何度も収穫できるわけだ。


 もちろんクリスティナが今言ったような問題はクリアしなきゃいけない。


 他にも品質が担保できるのか、とか、考えなきゃいけない問題はいくつもあるだろう。


「ただ――可能性は広がる」

「だね」

「はいっ」


 俺の言葉にクリスティナもセレスティアもうなずいてくれた。


「そうだな……まず高速栽培したブドウの品質を確認するところからだ。そこが問題ないのであれば、次に土地が痩せないように対策を打ったうえで、高速栽培と年に複数回の栽培というのを試してもいいんじゃないか?」

「うん。ただ、そこは慎重に行きたいから通常通りの栽培をする畑を基本にして、高速複数回数栽培の畑を小規模に用意。それを段階的に増やしていく感じでいいんじゃないかな?」


 と、クリスティナが提案した。


「なるほど……理にかなってそうだな」

「分かりました。では私は引き続き肥料や土壌が痩せないようにする対策などを研究してみます」

「ああ、頼む。それにしても――こんな短期間で開発するなんて、やっぱり君はすごいな」


 俺が言うと、セレスティアはパッと顔を輝かせた。


「あ、ありがとうございます……っ!」


 その頬がやけに赤らんでいた。


「ふーん……」


 クリスティナが俺を見て、ニヤリと笑う。


「隅に置けないねぇ、ディオン様も」

「?」


 俺は軽く眉根を寄せた。



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