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4 獣の剣技


「さあ、見せてくれ。君の剣を」


 言って俺はバルゴに木剣を投げた。

 彼はそれを片手でしっかりと受け取る。


「彼の名はバルゴ。俺が連れてきた騎士候補だ」


 俺は騎士たちに声をかけた。


「誰でもいい。彼と試合をしてくれないか」

「ならば俺が」


 騎士たちの一人が前に出た。


 屈強な体つきをした三十がらみのベテラン騎士だった。


【鑑定】すると名前はナーガルで、剣術ランクはA――十分に一流である。


「この若造の相手をすればいいんですかい?」

「ああ。遠慮はいらない。二人とも、な」


 俺はナーガルとバルゴを交互に見た。


「了解」


 ナーガルが巨大な木剣を上段に構え、


「分かりました」


 バルゴは俺がさっき渡した細い木剣を手に、前傾姿勢を取っていく。


 地を這うように低い、まるで獣のような姿勢。


「なんだ、その構えは。剣術の基本も知らんのか?」

「知りません。僕、剣術なんて習ったことないですし」

「……ふざけやがって」


 ナーガルが顔をしかめた。


「――始め」


 俺が合図を送る。


「どおおおおおおおおおおおおりゃあああああああああああっ!」


 同時にナーガルが突進した。


 バルゴを威嚇するような雄たけびとともに。


 速い――。


 猛スピードの突進から、巨大な木剣をまるで棒切れのように軽々と振るい、超速の一撃を見舞う。


 ――だが。


「っ……!?」


 次の瞬間、ナーガルの動きが止まった。


 バルゴの木剣が地面すれすれから信じられないスピードで伸び、ナーガルの喉元に突きつけられていたのだ。


「なっ……!?」


 騎士たちから驚愕の声がもれた。

 まさしく一瞬のうちに終わった勝負は、場の空気を一変させていた。


「ありがとうございました」


 バルゴは一礼して剣を退く。


「ば、馬鹿な……この俺が、反応さえできなかった……」


 ナーガルは呆然とした様子だ。


 これは――想像以上にすごいな。


 剣術レベルSは伊達じゃないようだ。


 この一試合だけでバルゴが騎士団の訓練に混じることに対して異議を唱える者はいなくなるだろう。


 まず第一関門突破だ。


「――っと」


 もう一つ、やっておかないとな。


「ナーガル」


 俺はバルゴに瞬殺された騎士に声をかけた。


「バルゴの相手をしてくれて礼を言う」

「……恥をさらしました」

「馬鹿を言うな」


 俺はナーガルの肩に手を置き、語り掛けた。


 そう、引き立て役になってしまった彼へのフォローは必須だ。


 バルゴには及ばないとはいえ、こいつだって有能な騎士の一人だからな。


「君の強さはよく分かっている。ここに居る者は全員が優秀な騎士だ。その評価が揺らぐことはない」


 俺はナーガルに、そしてその他の騎士たちに語り掛ける。


 当然【人心掌握】が乗っているから、その言葉は全員の心を揺さぶっているはずだ。


「バルゴの才能を見れば、ほとんどの騎士はナーガルと同じ結果になった可能性が高い。違うか?」


 騎士たちは小さくうなずいた。


「相手が悪かったんだ、ナーガル。ただ君は臆することなく立ち向かった。勇気を示してくれた。そのことを嬉しく思う」

「ディオン様……?」


 ナーガルは驚いたように目を丸くしている。


 まあ、本来のディオンならこういう時に容赦なく叱責していただろう。


 もしかしたらナーガルに罰を与えたり、あるいは即時解雇していたかもしれない。


 ただ、俺はもちろんそんなことはしない。


「君にはこれからも働いてほしいし、活躍してほしいんだ。どうか今日の勝負を気に病まないでほしい。嫌な役目をさせて済まない」


 俺は深々と頭を下げた。


「そ、そんな! ディオン様!? 頭をお上げください!」


 俺の行動がよっぽど予想外だったのか、ナーガルはうろたえた様子だ。


「あらためて言おう、ナーガル。君の勇気に感謝する」


 俺は頭を上げ、彼に微笑みかけた。


「あの少年に歯が立たなかったのは事実です。これから、今以上に精進します」

「ああ、期待している。君ならもっと強くなれる」


 俺が言うと、ナーガルはニッと笑ってくれた。


 よし、少しはフォローできたかな。




「じゃあ最後に――俺と勝負しようか、バルゴ」


 俺はバルゴに呼びかけた。


 そう、これが最後の仕上げだ。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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