39 メタシード
「さすがはヴィオラ様!」
「なんという剣技……まるで動きが見えなかった!」
騎士たちが、ヴィオラの強さを称えてた。
「ありがとうございました、ヴィオラ様。助かりました」
俺も彼女の剣技の冴えに驚きつつ、そう礼を述べる。
「ふん、今のは罠の可能性もあっただろうに……それを承知で近づいたんだな?」
腕組みをして鼻を鳴らすヴィオラ。
「――はい」
俺は一瞬息を飲んだが、すぐにうなずいた。
「負傷している様子で、しかも老人でした。放っておけば命にかかわると判断しました」
ヴィオラの鋭い視線を真正面から受け止めながら答える。
「お優しいことだ」
笑みを浮かべるヴィオラ。
「やはり私が聞いていた評判と、実際のお前は違うらしい」
その笑顔は、どうやら俺に対して好意的なもののようだ。
と、そのときだった。
ごおおおおおおおおおっ……!
突如、空を切り裂くような轟音が響き渡った。
「なんだ、あれは!?」
騎士たちが驚きの声を上げる。
見上げれば、空中から巨大な砲弾のような黒い物体が飛来していた。
まさか。
どくん……と胸の鼓動が早鐘を打つ。
「まさか――メタシード!?」
俺は思わず叫んでいた。
ゲーム内の知識が脳裏に蘇る。
あれは特別な魔物を生み出す黒い種子――メタシードだ。
「じゃあ、もう始まってるのか……!? ゲーム中盤以降の戦いが――」
王都にいきなり魔物が現れたのも、メタシードの飛来が原因なんだろうか……!?
どんっ!
放物線を描きながら、黒い種子が地面に落下する。
ぴきぴきぴき……。
メタシードが砕け散り、黒煙が立ち上がった。
その中から姿を現したのは、四足獣タイプの魔物だ。
「サンダーライノ……!」
その名の通り、雷光をまとった巨大な獣だった。
ゲーム内での強さはAランク。
強敵である。
るおおおおおおっ!
サンダーライノが咆哮する。
そして、次の瞬間、まさにその身にまとった雷光のような速度で駆けだした。
「っ――!」
ヴィオラが剣を構えるが、サンダーライノの超高速移動に対応しきれず、その剣は空を切る。
「速い……!」
王国の騎士たちも応戦を試みるが、その速度に追いつけず、次々と体勢を崩していく。
「落ち着け、動きを見極めろ……!」
俺は冷静にサンダーライノの動きを見つめた。
ヴィオラや騎士たちと違い、俺だけはあの魔物の行動パターンを知っている。
それを先読みすれば、いくら相手が超高速移動をしていても抑えられるかもしれない。
「……読めた!」
サンダーライノの突進を先回りし、剣を突き立てて牽制する。
奴の動きが一瞬止まった。
「そこだっ!」
そこを見逃さないのは、さすがのヴィオラだった。
鋭い一撃を繰り出し、サンダーライノに手傷を負わせる。
だが致命傷には至らず、奴は大きく跳び下がった。
「手ごわいな――」
俺とヴィオラが同時にうめいた。
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