37 ヴィオラの剣技
「ほう、王都に魔物が? それは物騒だ」
ヴィオラが鼻を鳴らした。
「民を守るのが王族の務め。ここは私が討ちに行くとしよう」
「えっ」
俺は思わず彼女を見つめた。
「ヴィオラ様みずからが……?」
「魔物と戦ってみたかった、と言っただろう? ちょうどいい機会じゃないか」
「ですが、危険です」
「お前だって領主の子でありながら、みずから戦線に立ったではないか?」
「私は貴族の子ですが、あなたは王族ですよ。重みが違います」
「違わないさ」
ヴィオラは意に介さない。
止めるべきだろうか。
このまま彼女を行かせたら、俺は『なぜ止めなかった?』と後から糾弾されかねない。
とはいえ、ヴィオラが俺の言うことを聞くようにも思えないんだよな……。
「私を心配してくれているのか」
「当然でしょう」
「ならば、お前も来ればいい。お前には魔物退治の経験があるのだろう? その経験を活かして私に助言をくれ」
「ヴィオラ様……?」
「私と一緒にいれば、私を守りやすいだろう? お前の失点も防げるぞ?」
「あなたが魔物退治に出かけてしまえば、その時点で失点です」
俺は憮然とした。
「ははは、諦めろ。私は止まらない。それに――宮廷の大臣たちも理解しているさ。私がこういう女だと」
ヴィオラはニヤリとした。
「さあ、どうする、ディオン?」
「……お供します」
仕方ない。
とにかくヴィオラを守るんだ――。
「姫様、いけません!」
「魔物退治は我らにお任せを!」
案の定、城の騎士たちがヴィオラを止めようとした。
「お前たちに任せるだと? お前たちの中で私より剣の腕が立つ者がいるのか?」
ヴィオラは剣を抜いた。
「姫様……!」
騎士たちが殺気立つ。
確か、先ほどの話では『ヴィオラが剣の達人』ということは公にしていない、と言っていた。
なら騎士たちは彼女の実力を知らないはずだ。
そんな彼女に挑発されては、さすがに黙ってはいられないのだろう。
「我らとて剣に命を懸けた職務をしております。そのような言い草は看過できませぬ」
「ふむ、その意気や由。ならば、続きは剣で語り合おうか――」
言うなり、ヴィオラの姿が消えた。
――いや、そう錯覚するほどの超スピードで駆け抜けたのだ。
「なっ……!?」
俺は驚愕した。
ヴィオラの剣技は――異常だった。
動きすらほとんど見えず、一瞬にしてその場にいた騎士たちすべての剣が叩き落とされていた。
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