35 アレクシスとヴィオラ
「もう少し砕けた話し方でもいいぞ、ディオン。俺とお前は年齢も近い。公式な場でもないし、楽にしてくれ」
アレクシスが笑った。
「恐れ入ります、殿下」
「アレクシス、だ」
王子がニヤリとする。
「……では、アレクシス様。まずは詳細な報告を」
俺はアレクシスに説明した。
領地に現れた魔物。
近隣の町への被害。
騎士団の奮闘。
そして、バルゴの圧倒的な戦闘能力。
「なるほど……」
俺の話を聞き終わったアレクシスは、わずかに眉根を寄せた。
「【ギガントウルフ】といえば、十年ほど前にこの国で確認された個体がいたが――それもたった一体だった。今回は六体か」
「はい。特に最初の討伐では五体同時に現れ、私も危ういところでした」
「そのバルゴという騎士が一人で五体を倒してしまったという話だったな。いや、すさまじい剣腕ではないか」
「はい。もともと剣の才を感じる少年で、特別に騎士隊に招き入れたのですが……今回の活躍は驚くべきものです」
俺は王に微笑んだ。
「天才……か。いや、俺もぜひ会ってみたいものだな」
「機会がありましたら、ぜひ。アレクシス様に紹介いたします」
と、
「へえ、面白い話をしているじゃない、兄上」
背後から聞こえた声に、俺は振り返った。
そこには俺と同い年くらいの少女が立っている。
ツインテールにした金色の髪に赤い瞳、勝ち気そうな美貌。
「来客中だぞ、ヴィオラ。慎め」
「といっても非公式だろう? 私も混ぜていただけると嬉しいな、兄上」
微笑むヴィオラ姫。
彼女はアレクシスの妹であり、彼同様に王立学院の生徒でもある。
ゲーム本編ではウェンディやジュリエッタのクラスメイトだ。
こんなところで出会うとは意外だった。
「ふうん。お前が噂のディオン・ローゼルバイトか。なかなかいい面構えをしているじゃないか」
ヴィオラは俺を値踏みするように見つめた。
「お初にお目にかかります、殿下」
「ヴィオラでいい。兄上もプライベートでは名前で呼ばせているだろう?」
椅子から立ち上がった俺に、彼女は悪戯っぽく笑った。
「……では、ヴィオラ様。以後お見知りおきを」
俺は一礼した。
「お前の噂は色々と聞いている。主に悪評の方だが――」
ヴィオラが俺を見て、笑う。
「噂はあてにならんな。お前の目には一点の曇りもない。腐った下郎の目ではない」
……まあ、悪評の方は俺じゃないディオンがやったことだしな。
「お前のことをもっと知りたいな。魔物を六体も討伐したのは大したものだが、それはたまたま部下に優れた者がいたからなのか? それとも優れた部下を見出し、扱うだけの器量がお前にあるからなのか? ふふ、興味が湧いてきたぞ」
「彼は俺の客人だぞ、ヴィオラ。ほどほどにな」
アレクシスが苦笑した。
「いいじゃないか、兄上。彼とは気が合いそうなんだ」
ヴィオラが笑みを返す。
「兄上との話が終わったら、次は私と話そう。よいか、ディオン?」
「ヴィオラ様の仰せとあらば」
俺は一礼した。
「俺の方は既に報告を受けた後だし、お前たちが歓談したいのなら止めはしない」
と、アレクシスが言った。
「ありがとう、兄上。では彼をもらい受ける」
言って、ヴィオラは俺に手を差し出した。
「さあ、向こうのバルコニーにでも行こう。お前のことを聞かせてくれ」
「はい、ヴィオラ様――」
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