34 王都へ
【ギガントウルフ】の討伐後、最寄りの町への報告などの事後処理を終えた俺は、その日は町に逗留し、翌日の朝に騎士隊とともに館まで戻ってきた。
一日がかりの遠征になったが、一人の死傷者も出さずに討伐を終えられて本当によかった。
ただ――手放しで喜んではいられない。
考えなければならないことがあった。
「魔物の出現はゲーム本編と同じイベントだった……だけど、イベントで出てくる魔物は一体だけのはず……」
自室に戻った俺は、考えを巡らせていた。
単なる誤差なんだろうか?
あるいは、もっと別の理由があるのか?
ただ、なんともいえない嫌な予感がさっきから消えなかった。
これは何かの予兆なのではないか、という感覚が――。
「ディオン様、よろしいでしょうか!」
扉が激しくノックされた。
ルーシアの声だ。
「いいぞ」
俺は自分から扉を開ける。
「あ、あの……」
ルーシアの顔は青ざめていた。
それだけ俺はおおよその事情を悟る。
「……魔物か?」
「は、はい、今度は領地の北部に……数体の目撃情報があるそうです」
やっぱり――ゲーム本編とは展開が少し違ってきている。
というか、エスカレートしているのか?
ゲーム本編の流れと一致はしてはいるものの、魔物の数が明らかに違う。
もしかしたら領内だけじゃなく、王国内の他の場所にも出現しているのかもしれない。
「騎士隊の本部に向かう」
俺はすぐに支度を始めた。
――二度目の魔物の討伐は、前回の教訓を踏まえ、騎士隊を総動員して当たった。過剰ともいえる戦力であたったのと、今回は一体だけだったので苦戦することなく倒すことができた。
討伐を終えた俺は手早く支度をして、王都に向かうことにした。
二度も魔物が出たのは、さすがに異常事態だ。
このゲームの世界観では、本来、魔物なんて滅多に現れるものじゃない。
だからこそ、序盤イベントの『魔物の出現』は大きな事件だったのだ。
まして、それが複数個所で、複数体が出現となれば――。
王の耳に入れる必要も出てくるだろう。
逆に何もしないと、報告を怠ったということで罰せられかねない。
――というわけで、半日ほどの行程で俺は王都にやって来た。
お供はルーシアの他、数人の使用人のみだ。
緊急ということで王への謁見の手続きをしたところ、王にいきなり直接会うことは難しいようで、第二王子のアレクシス殿下と会うことになった。
翌日の朝、俺は会談用の部屋に通された。
いよいよ、この国の王子とご対面だ。
「お前がローゼルバイト家の令息か。評判は聞いているぞ」
アレクシスは十七歳。
精悍で、整った顔立ちをした美貌の王子だ。
ちなみにゲームだと、彼は攻略対象キャラクターの一人である。
『アレクシスルート』に入った場合、最終的にウェンディは彼と結婚し、やがてこの国の王妃になる。
まあ、それはさておき。
「お初にお目にかかります、殿下。ディオン・ローゼルバイトと申します。お見知りおきを」
俺は挨拶もそこそこに、さっそく本題に入った。
「実は我が領地に魔物が出現しました。それも二度も。一刻も早く報告いたしたく、こうして参上した次第――」
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