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27 ウェンディについての考察

 館に戻った後、俺はウェンディのことを考えていた。


【花乙女の誓約】の主人公である彼女と、このタイミングで出会うとは予想外だった。


 そもそも、この世界に彼女が存在しているのかどうかすら把握していなかった。


「とりあえずウェンディと友好な関係を築けたのは大きな収穫だな……」


 彼女は、本来なら俺を破滅させる大きな要因となる人間だ。


 ゲーム本編のディオンは傲慢で、ジュリエッタからは婚約を破棄される。


 そして、そのジュリエッタとウェンディは親友なのだ。


 婚約破棄を通じて、ウェンディも俺を敵視するようになり、俺の没落は加速していく――。


「……そうだ、ウェンディが存在するってことは、もしかしたらジュリエッタと親友なのか?」


 可能性は十分ある。


 ――聞いてみるか、ジュリエッタに。

 と、


「ウェンディ? ディオンって彼女と知り合いなの?」


 声がして振り返ると、そこにジュリエッタが立っていた。


「ジュリエッタ……!?」


 あまりにもタイミングがよくて、さすがに驚いてしまった。


「ごめんなさい、突然声をかけて。ちょっと近くまで寄ったから……」

「申し訳ありません。何度かお声をかけたのですが……」


 と、ジュリエッタの側にはメイドのルーシアがいる。


「ああ、悪かった。ちょっと考え事をしていて気づかなかったんだ」


 どうやら思考に没頭するあまり、彼女たちが声をかけてくれたことに全然気づかなかったみたいだ。


「ようこそ、ジュリエッタ。君に会えてうれしいよ」


 俺はジュリエッタに微笑む。


 ちょうどいい機会だ。


 彼女からウェンディの情報を得ておこう。




「ふーん……? ウェンディに興味があるんだ?」


 ジュリエッタはジトッとした目で俺を見た。


 うん? どうしたんだ、ジュリエッタ……?


「可愛いもんね、ウェンディって。そっか……ディオンって彼女みたいな子がタイプなんだ?」

「……ジュリエッタ、もしかして機嫌が悪いのか?」

「そんなことないよ? うふふふふ」

「そう言いながら、思いっきりにらんできてないか?」

「そっか……ウェンディみたいなタイプを目指した方がいいのかなぁ、私……」

「???」


 ジュリエッタがいきなり悩み出した。


 どっちかと言うと、俺の方が悩み相談をしたかったんだが。


「よく分からないけど、君の気に障ることを言ったなら謝るよ。悪かった」


 俺は、とにかく非モテで女心なんて全然分からないからな。


 気づかないうちに彼女が嫌な思いをするようなことを言ってしまっているのかもしれない。


「えっ!? あ、ううん! ディオンは何も悪くないの! 私が勝手に、その……ご、ごめんね、謝らせてしまって」


 ジュリエッタはハッとした顔で両手を振った。


「うん、もう大丈夫。とにかく、ここから挽回するように頑張るから……!」

「???」


 ジュリエッタが何に怒っていて、何が原因で立ち直ったのか、さっぱり分からない。


 とはいえ、彼女が『大丈夫』と言っている以上、そこはもういいということなんだろう。


「じゃあ、あらためて聞くけど……ウェンディってどういう子なんだ?」

「結局そこかー……」


 あれ、また落ち込んだ?


 ……沈黙しばし。


「ウェンディはね……王立学院のクラスメイトなの」


 それからジュリエッタが話し始めた。


 得られた情報は、ず俺がゲームで知っていることばかりだった。


 とりあえずジュリエッタとウェンディがゲームと同じような親友関係であることは分かった。


 そして、もう一つ――。


 ゲーム内に登場する『攻略対象キャラクター』たちも、やはりこの世界に存在している、ということも。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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