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24 乙女ゲームの主人公

 乙女ゲーム【花乙女の誓約】。


 俺が前世でやりこんでいたこのゲームは、もともとは女性向けのファンタジーRPGなのだが、やけに作りこまれている戦闘シーンや、骨太な男性キャラクターの数々など、男にも人気の高いゲームだった。


 そして、そんな男たちの存在感に埋もれがちな、地味な主人公――それがウェンディ・ラミルだ。


 タイトルの『花乙女』が示すように、彼女は植物魔法を使う。


 基本的には植物を少し早く成長させたり、果実を多めに収穫できたり、あるいは枯らせたり……といったことができる。


 戦闘には向かず、地味な魔法だ。


 ただし――ウェンディの場合は、少し話が違う。


 物語が進むにつれて、彼女の魔法は飛躍的に成長していく。


 また、それに付随するイベントによって、彼女は人間的にも成長していく。


 その過程で、各男性キャラクターはウェンディに興味を持っていく。


 ある者は彼女の芯の強さに惹かれ、ある者は彼女の力に興味を持ち、またある者は彼女と共に事件に立ち向かいながら仲を育み、また別の者は――。


 といった感じで、攻略キャラクターごとに多彩な個別ルートが用意されているわけだ。


 ちなみにゲーム本編のディオンは、ウェンディと後に友人となるジュリエッタから婚約破棄され、その流れでウェンディ自身もディオンと対立する道を歩んでいく。


 やがて、その対立の影響もあってディオンの没落は加速し、とうとう破滅するのだが……。


 ウェンディの方は、最後にはこの世界の中心にある『世界樹』の危機を唯一救うことができる聖女として、ヒーローと共に英雄的な活躍をする。


 ――これが【花乙女の誓約】の大雑把なストーリー展開だった。


 そのウェンディが、目の前にいる。


 とうとうこのゲームの主人公に出会えたわけだ。


 俺は手を差し出した姿勢のまま、あらためて彼女を見つめた。


 この時点では俺たちは初対面のはずだ。


 ウェンディの俺に対する気持ちも、そこまで悪感情ではないはずだ。


 ゲームの場合は、やがてジュリエッタから俺の悪評をたっぷり聞かされるんだろうけど、この世界のジュリエッタは俺に好意的なはずだからな。


 ゲームと同じ流れにはならない。


 後は――この機会を利用して、できればウェンディと仲良くなっておきたい。


 俺の没落ルートの可能性を。少しでも薄れさせるために。


「ありがとうございます……あっ、薬草が……」


 ウェンディは俺に礼を言い、手を握って立ち上がる。


 その後、地面に散乱した薬草を見て、悲しげな顔をした。


「あたし、いつもこうで……そそっかしいんです」

「誰にだって失敗することはある。気に病むことはないよ」


 俺は微笑み、落ちている薬草を拾った。


「手伝おう」

「えっ、そんな……」

「困っている君を見捨てられないからね」


 もちろん俺の一言一言には例の【人心掌握】のスキル効果がかかっている。


 だから、ウェンディにとって俺の言葉は真摯に響くだろう。


 やっぱり第一印象ってすごく大事だからな。


 まずは親切心をアピールだ。


 とはいえ、これだけ派手に薬草が散乱していると、別に相手がウェンディでなくても手伝おうかなという気持ちになる。


 一人で全部拾うのは大変そうだからな……。




「ありがとうございました。あたし、ウェンディ・ラミルといいます」

「俺はディオン・ローゼルバイト。ここの生徒ではないけど、領内の学校の運営で参考になりそうだから見学に来たんだ」

「ディオン様……って、まさか、あの!」


 ハッとした顔になったウェンディは、すぐに気まずそうな顔をした。


「い、いえ、なんでもありません……すみません」

「俺の悪評でも思い出したか?」


 俺は悪戯っぽく笑ってみせた。


 下手に隠し立てするよりは、たぶんこういう態度の方が正解だろう。


 噂レベルの悪評と、実際に目の前にいる俺と――後はウェンディが俺をどう判断するか、だ。

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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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