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2 まず領地を視察しよう


 俺は部屋を出て、廊下を歩きながら、これからの計画を頭の中でまとめていた。


 まずは領地の現状を把握することだ。


 ローゼルバイト家の領地は、痩せた土地や人手不足、財政難に苦しんでいると聞く。


 領民の士気も最低レベル。


 病床の父は引退状態に近く、実質的にローゼルバイト領を治めるのは俺の役目だった。


 ゲーム内のディオンは領地の惨状から目を背け、自分の欲望に忠実に生きていた。


 他者に厳しく、自分に甘く。


 そうして周囲の人々は遠ざかり、やがて断罪されるかのように破滅していく――。


「……婚約者のジュリエッタも、俺を嫌ってるんだろうな」


 原作の彼女は、途中で俺を見限って婚約破棄を申し入れてくる。


 その辺りも破滅フラグの一つだから、婚約破棄をなんとか回避したいところだ。


 ただ、領地が今のような惨状ではいずれジュリエッタは俺を見限るだろう。


 そうならないためにも、やるしかない。


 領地経営なんて素人もいいところの俺が――やるしかないんだ。




 三十分後、支度を終えた俺はさっそく館の外に出た。


 いずれ領内をくまなく回るつもりだけど、まずは領主の館の近辺を視察するところからだ。


「うわ、思った以上にひどいな……」


 俺は領内の荒廃ぶりに絶句した。


 畑が半ば干上がっている。


 農民たちは疲弊した顔つきで、手にした農具はボロボロだ。


 だが、目を背けてはいられない。


 まず、ここからだ。


「こ、これはディオン様――」


 俺に気づいた農民たちがかしこまった。


「いや、そのままでいい。作業の手を止めてすまない」


 俺は彼らに軽く礼をした。


「い、いえ、そんな……」


 農民たちはその場で深々と一礼をした。


 さっきのルーシアと同じだ。


 みんな、怯えた顔をしている。


「かしこまらないでくれ。その……今まで俺は君たちに厳しく当たっていたかもしれない。それを忘れろとは言えない。ただ、これからの俺は今までとは違う」


 俺の言葉には【人心掌握】のスキルが乗っている。


 これはいわゆるアクティブスキルではなくパッシブスキルのようだ。


 俺が意識的に遮断したときのみ【人心掌握】はオフ状態になり、そうでなければ、何も意識しなくても自然と俺の言葉に【人心掌握】のスキルが乗る。


 だから、今の言葉も農民たちの心を強く揺らしたはずだ。


「俺は今、領内を視察しているところなんだ。君たちも知っての通り、ローゼルバイト領は荒廃している。ただ、今さらと思われるかもしれないが、俺は領地を改革し、現状を打破したいと考えている」

「ディオン様……?」


 農民たちが驚きの表情を浮かべる。


 今までの悪役令息の変わりようと、【人心掌握】が乗った俺の言葉が、素直に心に響いたことの相乗効果だろう。


「もちろん君たちの現状に対しても――今は厳しい状態だと思うが、よりよくしていきたいんだ。そのために俺は力を尽くす。君たちにも協力してほしいと思っている」

「ディオン様……っ!」


 農民たちの表情が変わった。


 期待と、それでもないにじみ出る不安と。


 その両方だ。


「今すぐ俺を信じなくていい。今までの俺の所行から考えれば、信じてくれなんておこがましいことは分かっている。ただ、これから変わる。俺は変わってみせる。今日はまずその宣言に来た」


 俺は朗々と言い放つ。


 こんなことを言うのは、俺のガラじゃない。


 前世の俺はしがないサラリーマンに過ぎなかった。


 けれど、こうやって話しているうちに、だんだんと自分自身が『その気』になっていくのを感じた。


 あるいは【人心掌握】は俺の心にも作用して、俺を領主代理らしく仕立てあげてくれているんだろうか。


 ともあれ、俺は朗々とした調子で農民たちに言い放つ。


「これから変わっていく俺と、俺の領地経営を――どうか見ていてほしい」




 で、俺は彼らから具体的な問題点を聞きだした。


 土地が痩せていて、収穫量が少ないこと。


 家畜の数が不十分であること。


 それを補う資金もないこと。


 さらに灌漑や肥料の知識も十分に持っていないこと。


 なるほど、問題山積というところだな。


 ただ、俺にはゲームの知識がある。


 前世の知識の方は、農業に詳しいわけじゃないから、ここではあまり役に立たないが――。


 そうだ、【鑑定】を使えば、この中に有用な人材を見つけられるだろうか?


 期待を込めて見回したが、いずれも突出した農業レベルを持つ者はいなかった。


「……ん?」


 一番奥にいる少年が目に留まった。


 他の農民たちに比べて、やたらと若い。


 まだ十三、四歳くらいじゃないだろうか。


 野性味のある雰囲気で、よく見るとかなり整った顔立ちの美少年だった。


 バルゴ・ルドラー。剣術レベルS、軍略レベルA……。


「えっ、すごいぞ――」


 農民に紛れて、こんなすごい剣士がいるとは。


 この少年には将来、俺の元で騎士団長を務めてほしい。


 初日からいきなり有能な人材に出会ってしまうとは、幸先がよすぎるぞ。


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敵国で最強の黒騎士皇子に転生した僕は、美しい姉皇女に溺愛され、五種の魔眼で戦場を無双する。


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