17 俺は婚約者とイチャイチャしなければならないらしい3
「ジュリエッタは社交界でかなりの人気があるそうだね」
「えっ、ま、まあ、その……」
馬車に揺られ、領内を進みながら、俺はジュリエッタと話していた。
今のはディオンの記憶だ。
といっても、元のディオンは彼女に興味があったわけじゃなく、あくまでも人物情報として『ジュリエッタが社交界で人気』だと覚えていただけらしいが……。
「急に言われたら、照れるんだけど……」
「ああ、ごめん。俺、女の子と話すのに慣れてなくて」
「それは嘘ね」
即答された。なぜだ。
「いや、本当だって。今も、その、ちょっと緊張してるっていうか、舞い上がってるっていうか」
めちゃくちゃ美少女だからな、ジュリエッタって。
性格も、なんか可愛らしいし。
こんないい子から見限られるなんて、本編のディオンは本当に嫌な奴だったんだろうな。
……って、悪役令息だし、それはそうか。
「舞い上がってる? わ、私と一緒にいることに……?」
言いながら、ジュリエッタが恥ずかしそうに顔を背けた。
「も、もう、やめてよ……そんなこと言うの……」
言いながら、その口元がわずかに緩んでいるのを、俺は見逃さない。
この素直すぎる反応が可愛いんだよな。
和んでしまった。
と、反射的にジュリエッタを【鑑定】してしまい、
『貴族礼儀作法:S』
というデータが見えた。
「へえ、礼儀作法も完璧ってことか」
「うん? あ、そ、そうね……礼儀作法はお母様から厳しく教えられたから――」
と、ジュリエッタ。
「俺、そういうのが苦手で……これから視察に行く商業区や農園で、俺の立ち居振る舞いが変だったら、側で教えてくれないか?」
「えっ」
「そういう態度も領主代理としての信用につながっていくからね。君がサポートしてくれると心強いよ」
「私でよければ……」
「ありがとう、ジュリエッタ」
俺はジュリエッタの手を取り、礼を言った。
「も、もう、それくらいいいわよ……だ、だって、婚約者……だし」
頬を染めて告げるジュリエッタ。
お? 婚約者っていう関係に対して、嫌がる素振りを見せてないぞ?
これはいい兆候だと思う――。
それから間もなくして、馬車が商業区に到着した。
通りを商人たちが行き交い、活気にあふれた区域だ。
「これはディオン様、ようこそお越しくださいました」
出迎えてくれたのは商業ギルドのギルド長だ。
「今日はよろしく頼む。こちらは俺の婚約者、ジュリエッタ・フォルテ嬢だ」
「初めまして。ジュリエッタ・フォルテと申します。お見知りおきを」
優雅に一礼するジュリエッタ。
その気品と美貌に、ギルド長はポーッと魂が抜けたみたいな顔になった。
「ど、どうも、よろしくお願いいたします……」
うん、分かるぞ。
ジュリエッタは絶世の美少女だからな。
「この領地の主製品はワインだ。売れ行きはどうかな?」
「……正直、あまり芳しくはありません」
俺の問いにギルド長の表情が曇った。
「品質が年々落ちていると、あまり評判も、その……」
「……そうか」
以前に寄った農民たちを見ても、ワイン作りが上手くいっていないことは分かっていた。
「ただ、今後は盛り返せると思っている。先日、農園の方に行ってワイン作りの体制を整備したところだ」
「ええ、聞き及んでおります。私もそちらには大いに期待しておりまして……」
「収穫はまだ先だが、新ワインが上手く言ったら、君たちにも協力を仰ぐことになる。領内での販売、そして他の町への売り込みも……よろしく頼む」
「もちろんです。喜んで!」
ギルド長の顔が生き生きとし始めた。
やっぱり新たなビジネスチャンスの予感があれば、自然と活力が出るもんなんだな、商人って。
「次は農園に行こう。悪いな、付き合わせてしまって……」
思ったより話し込んでしまい、俺はジュリエッタに謝った。
「つい話に熱がこもってしまった。今日は君を優先すべきだったよ……ごめん」
「ううん、私も側で聞いていて楽しかった。ディオンって、そういう一面もあったのね」
と、ジュリエッタ。
お、好意的な感じの笑顔だ。
よかった……退屈させてしまったのかと焦ったぞ。
「次は農園だったわね。行きましょ:
と、ジュリエッタから俺の手を取ってきた。
俺は力強くうなずき、手を取り返す。
「あ……っ! ご、ごめんなさい。私……」
恥ずかしそうにジュリエッタは手を離した。
そんな態度も可愛らしい。
正直、今日一日で俺のジュリエッタへの好感度はかなり上がっている。
彼女の方はどうなんだろうか――。
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