13 覚醒する天才
して終わった。「があああああああああああああああああっ!」
バルゴの雄叫びが大気を激しく震わせた。
まるで獣の咆哮だ。
ぐんっ!
バルゴの体が低く沈みこんだ。
次の瞬間、俺の目に映ったのは残像だけだった。
速すぎて、まともに視認できない――。
「これは……!?」
バルゴが、残り七体のオーガに向かって弾丸のような勢いで向かっているのだと俺は気づいた。
「待て、同時に複数体と戦うな! 無茶だ――」
俺は慌てて彼をフォローするために駆け出した。
が、次の瞬間――、
ざんっ!
バルゴが、巨大なオーガの喉元に一閃を食らわせる。
肉の裂ける音。
血が噴き出す音。
斬られたオーガはゆっくりと膝をつき、倒れた。
わずか一秒程度の出来事だった。
「なっ……!」
俺が驚いている間に、バルゴは既に次の一体に向かっている。
またもや残像しか見えないほどの超スピードで間合いを詰め、オーガの懐に潜り込み、
ずんっ!
一撃で心臓を貫く。
「ふうっ、ふうっ、ふうっ……!」
胸から血を吹き出し、倒れるオーガに目もくれず、獰猛な顔つきで残りのオーガたちをにらむバルゴ。
「僕が――俺が、ディオン様を守る……! 俺を見出してくれた、この方に――報いてみせる」
バルゴは、すぐに次の一体へと向かっていく。
その動きは一切の無駄がなく、しかもますます速度を増していき、オーガの攻撃を紙一重で避けながら、次々に斬り伏せていく。
「に、人間か、こいつ――」
俺は戦慄した。
もはや人間の動きとはとても思えない、たとえるなら獣の――いや、魔獣の剣技。
――どさり。
八体目のオーガが首を刎ねられ、その場に倒れた。
周囲には八体のオーガの死体が転がっている。
バルゴが、たった一人で成し遂げたのだ。
「し、信じられない……」
ナーガルたち騎士全員が呆然とした様子だった。
それ以上、誰も声を上げられず、戦場を静寂が支配していた。
もちろんバルゴが強いことは知っている。
けれど、ここまで異常な強さを見せたことはない。
模擬戦訓練だって上位の騎士が相手なら、かなり拮抗している。
初日に惨敗したナーガルも、彼の太刀筋を覚えてからは互角以上に戦っていたと聞くし……。
バルゴは血まみれの剣をゆっくりと振り払い、俺の方を見た。
「ご無事ですか、ディオン様……」
「あ、ああ。すごかったな、バルゴ」
驚きつつも、俺はバルゴをねぎらう。
「自分でも驚きました。僕にこんな力があるなんて……」
バルゴ自身も呆然とした顔だった。
一時的な覚醒ということだったんだろうか?
それとも――Sランクの天才が今まさに目覚めたということなんだろうか?
評価を下すのは、まだ早計かもしれない。
そもそも俺の周囲にいる人物は、実際のゲーム本編に出てこないキャラクターが多くて、概要が分からないんだよな……。
――ともあれ、俺たちのオーガ討伐はこうして終わった。
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