12 モンスター討伐
俺は騎士隊の選抜メンバーを集め、すぐにモンスターが出没するという地点へと向かった。
騎士隊からはナーガルを筆頭に、精鋭を20名ほど選抜。
本人の志願により、バルゴも同行することになった。
目的地となる村までは馬車で二時間ほどの距離だ。
「目撃情報によると、どうやら複数のオーガが他の区域から移住してきたそうです」
馬車の中でナーガルが報告する。
オーガは巨大な鬼のモンスターだ。
知性は低いけれど、パワーや耐久力には恐るべきものがある。
個体差が大きいものの、並の騎士なら五、六人でかからないと厳しい相手だった。
今回は精鋭メンバーだし、十分立ち向かえるはずだけど――。
「オーガは全部で三体という話だったな」
「はい。それ以上の数は報告されておりません」
「こちらは精鋭が20人――問題なく対処できるはずだ」
と、
「ディオン様、村が見えてきました」
御者が言った。
のどかな田園風景が前方に広がっている――けれど、
「あれは……!」
村の入り口近くに全長十メートル近いシルエットが見えた。
数は三つ。
巨大な角と鋼のような肉体を備えた鬼のモンスター……オーガだ。
「報告通り、三体か……いや」
村の中にも巨体がうごめいているのが見えた。
「プラス五体――!」
俺は表情を険しくした。
さすがに想定外だった。
オーガはそれほど多くの個体が群れになるような習性はない。
これはディオンの知識である。
今回はレアケースということか?
ただ、その辺りも想定して20人といわず、騎士隊全員で来るべきだったか?
とはいえ、モタモタしていたら村の被害が大きくなる。
とりあえず出動できる20人を率いてすぐに来たわけだが――。
「……こういうことも見越して、増援の指示を出してから来るべきだったな」
後から思い起こせば、そういう考えも出てくる。
が、出発時点では瞬間瞬間の判断が求められるため、俺はその考えに至らなかったのだ。
やはりゲームと現実は違う。
そして訓練と実戦も――。
俺は、まだまだ判断が甘いんだ。
と、
「ひいいいいっ……」
「た、助けて――」
避難が遅れたらしい数名の村人が逃げ回っていた。
「馬車を急がせろ! 彼らを救う!」
俺も剣を抜いた。
今は自分の判断を悔やんでいる場合じゃない。
目の前の出来事に対処すること――それだけに全力を尽くすんだ。
馬車が加速する。
オーガたちもこちらに気づいたのか、村人を負うのを止めて迎撃態勢に入った。
「全員、抜剣! この場で奴らを掃討する」
俺は騎士たちに指示を出した。
「犠牲者は一人たりとも出すな。村人も、そして君たちもだ!」
「ちいっ、硬い!」
ナーガルの剣がオーガの肩を切り裂くが致命傷には至らない。
他の騎士たちもそれぞれ立ち向かっているが、八体のオーガが同時に向かってくる状況は厳しいものだった。
俺も剣を振るい、オーガに立ち向かう。
生まれて初めての実戦だった。
緊張と興奮で、恐怖は感じない。
「はあああああああああっ!」
ディオンの体は剣術A。
精鋭の騎士に匹敵する実力だ。
けれど、その俺の剣をもってしても、オーガには大したダメージを与えられなかった。
逆にオーガの反撃が迫る――。
「くっ……」
俺は大きく跳び下がって、そいつの拳を避けた。
かすっただけで、肩の辺りに痛みが走る。
まともに食らうとまずい――。
俺は剣を構えなおした。
けれど、肩の痛みで上手く構えられない。
「……!」
オーガがさらに迫る。
「ディオン様!」
そのとき、横合いから誰かが飛び込んできた。
まさしく閃光のような速度で。
「バルゴ……!?」
「はあああああああああああっ!」
雄たけびと共に、低い姿勢から伸び上がるように繰り出される斬撃。
獣のように低い姿勢から見せる独特の剣技だ。
ざんっ!
その一撃は異常なまでに鋭く、オーガの体を深々と切り裂いた。
ぐがっ……。
短い苦鳴を上げ、オーガは倒れた。
「……助かったよ、バルゴ」
「僕が、あなたを守ります」
血まみれの剣を手にしたバルゴの目は、爛々と輝いていた。
「バルゴ……?」
いつもと雰囲気が違う――?
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