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2話 バイトしようかの!!

わしの名は芽狐!絶賛仕事バイト探し中の神様じゃ!

なぜ、正社員じゃなくてバイトなのかというと…



…「あ、お芽狐さま。正社員ではなくバイトにしてくださいね、お芽狐さまは神であるゆえに人間とは似て非なる存在なんです。つまり、お芽狐さまには人権が保障しかねるんです。人権がなければ法なども適用されず、ひどい扱いを受けるなんてこともあり得ます。しかも、この国特有の自分以外の多様性を認めない排斥志向があってですね、お芽狐さまみたいな明らかに排斥される見た目の人が入ってきてしまったら、その人は…もう終わりです…メッタメタのケッチョンケチョンに…されてしまいますよ」


「一気に言われても何も頭に入ってこんのじゃが…」


今日の神主はすごくおしゃべりさんじゃ…なんか口調もおかしいし、まあ心配してくれてるのは伝わるのじゃが、言い回しがくどいんじゃ…

もっとビシッて直接的に言えばよいのに…


「けど、排斥志向が蔓延っているのは正社員の世界であって、バイトの世界では多様性を多少認めている所が多いんですよ、やはりこれも近年の少子化の影響でしょうね…」


「神主よ、簡潔にまとめてくれんか?わしの頭では処理しきれん」


「ああ、すみません、話しすぎましたね。端的に言うとお芽狐さまは人権無くて弱っちいので、働くにはバイトしかないってことです」


まとめろとは言ったがディスれとは言っておらんぞ!…



とまあ、こういった感じで現在進行形で探してはおるんじゃが…

やりたい仕事が見つからないのぅ…

もう“やりたい”じゃなくて“できそう”な仕事で探した方がよいのかのぅ


暫くして…


「よし、いくつか候補が上がったことだし、早速応募じゃ!」

ボタンポチっとな


「履歴書用意するかの」


わしは近くのコンビニで履歴書を買いに行くことに

久々の外出じゃの

今日もおてんとさんが元気でポカポカしてて、わしはいい気分じゃ

歌でも歌おうかの~

とわしはユ○コーンの『大○惑』を口ずさみながらスキップしてコンビニに向かっている道中に後ろから…


ワンッ!ワンワンッ!ワン!ツー!


突然犬がわしに向かって吠えてきたのじゃ

わしは驚いて、全身が硬直した


「コ、コラ、ポコ太!やめなさい!」


わしは硬直した身体を無理矢理動かして声のする方を見ると

大型犬を必死に押さえている女性の姿があった


いや、犬でけーな、2メートルくらいあるぞ

それを押さえられるこの人もヤバいんじゃがの


ヘッヘッヘッヘッ…


そんなこと思っている間に犬は大人しくなっていた

すると、女性はわしの方に近づいてきて


「ごめんなさい、驚かせてしまって。大丈夫でしたか?」


……思っているよりも小柄じゃなあ…中学生くらいか?

結構わし好みの体形じゃ...まだ小さい胸部やあのデカ犬を押さえ続けていたであろう細い割にしっかりとした筋肉が付いておる…ずっと見てたいの……ぐへへへへ


「あの、大丈夫ですか?」


「…!あ、あぁ、だ、大丈夫じゃ」


「ほんとに大丈夫ですか?顔が赤いですよ、熱でもあるんじゃ…」


と少女はさらにわしの方に体を寄せてきて、額とわしの額を合わせてきた


おっ、もう少しで見えそうじゃ

(よこしま)なことを考えていると


「特に熱はなさそうですね、熱中症とかには気を付けてくださいね、ではまた~」


颯爽と行ってしまった……


さて、向かうとするかの


コンビニに着いた


「えっと、何買おうとしたっけ...そうじゃ、履歴書じゃな」

履歴書買った


帰りは特に出来事はなかった、アライグマの死骸があったくらいしかない


神社に帰ってきた、改めて見てみると結構ボロボロじゃなぁ…

社号標(神社の名前が彫ってある柱)の文字がかなり読みづらいの

「二」と「成」しか読めん

まあ、ちょうど愛称と同じだしいっか

参道やなんか龍の口から水が出てるやつがボロボロなのはよくないな

特に、水に関しては白濁してるし…何とかしないとな


「帰ったぞ神主よ」

…あれ、なんも返ってこないな、外出中なんかな、まあいいや


「やることやったし、束の間の休憩じゃ!なにしようかのー♪」


ゲームはある程度やってしまったからあんまやる気じゃないだよなぁ


「ん、おぉ、いつに増しても元気じゃな」

気づかない間にわしの身体の方は道中のことを思い出したらしい


「しばらくやってなかったし、溜まってたんじゃな、では、やるとするかの~」


わしは引き出しを開け、中から神主にはバレないようにこっそりと買ったアレな道具を取り出した


…へ…ぐへへ…ぐへへへへ、たまらんのぅ、考えるだけでウズウズしてくるのぅ~、今回新しく買ってきたやつはいつもよりも大きいのにしたんじゃ、あぁ、もう辛抱たまらん!

わしは服を脱ぎ捨てて始めようとした瞬間


「ただいま、お芽狐さま~、大好きな手作りプリン買ってきm…」


神主がわしの部屋に入ってきた


「あ…あぁ…ああぁあ、ぎにゃあああああああああああああああ!!!!!」

わしは叫んだ



「うぅ、うぐぅ…ヒック…ぅう…、も、もうお嫁にいけない…グスっ…」


「なに言ってんですか、ほら早く服着てください」

神主はわしが乱雑に脱ぎ捨てた服をまとめてわしの前に置いてきた


「う、うむ…グスッ」


わしは服を着替えておると神主は言った


「お芽狐さまの裸体初めて見ました、幼児的な体型の割に凶暴なモノをお持ちのようで」


今日の神主は絶対おかしい、帰ってくる前よりもおかしい、普段、こんなデリカシーのないことは言わんはずなんじゃが…


「おぬし、道に落ちてる変な物でも食ったのか?それとも、転んで頭ぶつけたのかの?」


「いえ、ただ、今までの鬱憤(うっぷん)を晴らそうと少しちょっかいを掛けただけです」


「そのちょっかいはやめてくれ、わしの心は絹ごし豆腐並みに崩れやすいんじゃぞ。恥ずかしさとかで泣きそうじゃ。のぅ、しっかりとこの神社のために奉仕するからぁ~、虐めるのだけはやめてくれぇ~、後生じゃぁ~」


とわしは顔をぐしゃぐしゃにしながら哀願した


流石に可哀そうと思ったのか、神主は、


「わかりました、わかりましたから、私の服で顔を擦り付けないでください!涙と鼻水でビチョビチョになりますから!」


そう言って、なんとか許諾してもらった


そして、わしが鼻をかんでいると


ピローン


メールが届いたようじゃ


「なんじゃろ……おっ、面接日時に関するメールじゃ、えーーっと……都合の良い日時を打って送ればいいんじゃな……よし、できた、送信っとな」


ボタンぽちーー


「一応聞きますが、何のバイトに応募したのですか?」


「スーパーマーケットのバイトじゃ、詳細を見た感じじゃとそれほど難しい内容ではなさそうじゃ」


神主は一瞬だけ不安そうな顔をした気がしたが、


「まあ、やるのはお芽狐さまですし、お芽狐さま自身がやる気満々で私は嬉しいです。面接頑張ってくださいね」


「おう、バイトは落ちることはあまりないって聞くし、大丈夫じゃろ、だってわし、神じゃぞ?神を落とすような愚か者はおらんじゃろ」


「…………。(実際は人間より神様の方が不利ですけど…バイトなら…さすがに落ちるなんてことは……)」


「ん?なんか言いたいことでもあるのか?」


「あ、いえ、何でもないです。境内の掃除をして来ますね」


「ん、お、おう」


やはり気のせいではないな、神主はわしのことで不安を抱いてるな

何が気にかけているのかは知らんがな


面接日までわしは何をしようかの

わしの(せがれ)はもう意気消沈じゃ...


うーん


Y○uTubeで癒し系の犬猫でも見るかのぅ…


かなり時間が経ったと思う。外はすっかり暗くなっていた。

あと……眠気が…


おやすみ…


………初めてのバイト……こんなわしでも雇ってくれる者はいるのじゃろうか…今の社会でわしは必要なんじゃろうか…一応、人間たちを救ったことはある…が、もう1000年前の事じゃ…覚えている者はいないじゃろ…


わしはなかなか寝付けることが出来なかっt、ぐー、zzz

あれ、朝じゃ

いつ寝たんじゃ?


ピローン


うん?……おぉ、面接日時が決まったのか、どれどれ……今日の午後2時に面接を行います…

面接まであと数時間か……身支度するかの


わしは重たい身体を起こし、身支度をした


「うぅ…緊張するのぉ~...」


わしは落ち着くことが出来ず部屋の中を徘徊してた


「持ち物はしっかりと持ったし、どんなことが聞かれるのかというのもネットで徹底的に調べた、うーん、なんか忘れているような~...」


わしは持ち物を持って、参道を掃いている神主に最終確認として聞くことにした


「なあ、神主。わしちゃんと準備できてるか?」


「ん~、見る限りは問題無さそうですね。」


「でも、なんか忘れている気がするんじゃがのぉ」


「服装は…大丈夫そうですし…聞かれる可能性のある質問とか調べましたか?」


「あぁ、もちろん調べたぞ、何聞かれても大丈夫じゃ!…と思う…」


「…じゃあ、大丈夫です。お芽狐さまは頑張って調べたんでしょう?様子を見る限り努力しているのが伝わります。きっと、いけますよ。あとは前に進む勇気を持つだけです。では、頑張ってください、応援してますよ。」


「神主ぃ……」


こんなこと言われたの初めてじゃ...嬉しいのぉ……嬉しくて泣きそうじゃぁ…


「よしっ!あれだけ頑張ったんじゃ、その成果を見せてやるんじゃ!では、行ってくる!」


「いってらっしゃい、お気をつけて~」


わしは面接会場へと向かった


「よし、着いたぞ」


わしが応募したスーパーは神社の近くに位置しており、神主が買い出しに行くときによく来る場所じゃ

かなり品揃えが良く、食品はもちろん、雑貨や、本、服、などなど…なんなら門松もある

初めて来たときに「もはやスーパーじゃないじゃろ」と言ったことがあったんじゃが、偶々それを聞いてた店長が「うちはスーパーだ!!」て怒鳴ってきて、泣きそうになった

まあ、そんなことはどうでもよくて…


スマホを見ると画面には「13:40」と表示されていた


「む、少しばかり早く着いてしまった…今のうちに店内を回るとするかの」


わしは自称スーパーに入った


軽く店内を一周し終わり時計を確認すると


「5分前か」

店員さんに話しかけるか…


「あの~、バイトに応募した芽狐ですが~」


「あ、芽狐さんですね。では、付いて来てください」


店員さんの後を付いて行き、「関係者以外立ち入り禁止(staff only)」と書かれた謎の扉の前で


「少々お待ちくださいね」


店員は扉の向こうへと消え、しばらくすると


「君が芽狐さんですね」

店長が出てきた


「そうじゃ」


「では、中に来てください」


「う、うむ」


「こちらにお座りください」


「失礼します…」


「このスーパーの業務は…(以下略)」

なんか色々言ってた


「…履歴書を拝見しましたが…年齢がおよそ2000歳…?学歴が空白?…なんですかこれ?」


「これは…そのぉ…あれじゃ…本当のことを書いただけじゃ…」


「嘘書くのはだめですよ、あとなんでコスプレなんかしてんですか!面接舐めないでください!」


「嘘なんか書いとらん!ちゃんと二千年以上生きてるし、耳も尻尾もちゃんと生えておるぞ!ほら!」


「とりあえず!この大きな尻尾!私が話してるときにブンブンするな!邪魔です!」


「どうしようもないじゃろ!身体の一部なんじゃから!」


「もういいです!今日は以上です!お帰りください!ほら!早く!」


「ふざけるな!こんなの納得しないぞ!わしはなんも悪いことしてないじゃろ!」


と20分くらい口論になった


「はぁ…結果は後日にメールでお伝えしますので…」


「…わかりました」


「面接は以上となります。質問はありますでしょうか?」


「…ないです」


「では、お疲れさまでした。お気をつけてお帰りください」


「ありがとうございました…」


なんか凄く疲れた


「ただいま~、神主ぃ。もうヘトヘトじゃ」


わしは荷物を放って、ソファーへとダイブした


「おかえりなさい、お芽狐さま。どうでしたか?うまく受け答えできましたか?」


「う~ん、まぁ、出来たと言えば出来た…けど容姿についてちょっとな…」


「ん?容姿ですか?行く前に見たときは何も…って、あ!」


「む、どうかしたかの?」


「耳と尻尾隠すの忘れてました!…けどバイトで容姿“だけ”が原因で落ちるのは聞いたことないですし…大丈夫…かな」


えぇ…もうやってしまったことだし、あれこれ考えなくもいいじゃろ…


「わしは疲れたからもう寝るー」


「ちゃんと布団かぶって寝てくださいね。暑くなってくる季節とはいえ、夜はまだ冷え込むので」


「はーい…」

疲れた時に入る布団は気持ちいいのぅ…

この心地よさがずっと続けばいいのに…


…ガバッ


部屋の中が真っ暗になっていた


どのくらい寝てたんじゃ…

20:37…4時間くらい寝てたのか…


グウゥ~

お腹空いたな


「神主―、腹減ったー」


「お芽狐さま、起きたんですね。ご飯できてるので、よそってきますね」


「おぅ~」


「はい、どうぞ。召し上がってください」


「うむ、ありがとな。では、いただきます」


「む、今日の味噌汁は油揚げがいつもより多いな、なんかあったのか?」


「どうしてでしょうね、気づいたら多めに入れてました」


「そうか、んお?鯛の活け造りがあるのだが…」


いつもは焼き鯖や焼き鮭なんじゃが


「どうしてでしょうね、気づいたらありました」


流石に無理があるじゃろ


「大丈夫か、神主。なんかあったのかの?」


しばらくの沈黙が続いた後、神主は口を開いた


「…実は、お芽狐さまのことがすごく心配なんです。こんな苦しい世の中に耐えられるのか…とにかく、心配と不安でいっぱいなんです…お芽狐さま自身も不安なのは分かってます、ですので、美味しいものを食べて少しでも楽にしてあげたいと思って…」


「神主よ。やる前にどうこう言っても仕方ないぞ。やってみなきゃわからんぞ。もしかしたら、意外と世の中は悪くないのかもしれん。」


「でも………分かりました。一つだけお願いさせてくれませんか?」


「何をじゃ?」


「お芽狐さまが働き始めた週の日曜日に私の過去の話を聞いて欲しいんです」

もしかしてあの暗い話をするのか……


「お願いします、どうしても伝えないといけないんです」


「わ、分かったから、ひとまず飯を食わせてくれ」


「あ、邪魔をしてしまってごめんなさい、そうですよね」


…「ご馳走様~」


飯も食い終わったことだし、風呂入って寝るか


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