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1話 働くしかないのか!?

ある神社の御神体の狐神、芽狐。古代のときは神様らしい力を使って民たちを救っていたが、今は完全に平和ボケしており、毎日ゲーム三昧。このまま自堕落に生活していくと思いきや...

わしの名前は芽狐(めこ)珠二ツ杁成(たまふたついりなり)氏珍宝発起(うじちんぽうほっき)神社(愛称:ふたなり神社)の御神体じゃ。みんなからはよく「お芽狐さま」と呼ばれている。まあ、おめこって呼ばれても……わし、ち○ぽもあるしなぁ…と当初は毎度そう思っておったが、今はもうすっかり馴染んでおる。さて、わしは今、”ゲーム”とかいう遊びをやっておってな、すっごくハマってしまっているんじゃ。朝から晩までずーーっと。世間では…えーっと…そうじゃ、「沼る」って言ってたかのう。このまま、ゲームに沼って、楽しくだらだらと過ごしていくと思っていたんじゃが、最近......


「あのー、入ってもよろしいでしょうかー?」


あぁ、また来たよ、神主。


「ああ、アレな、わかっておる。やろうと思っておる~」


どうせ、いつもの「外に出て日の光を浴びろー」って言うんじゃろ...


「今回はそういうのではなくて~...」


では、なんの用じゃ?


「神社の運営を辞めてしまおうかと...」


............ふぇ?


「なななななにををいうってんじゃー!!!」


神社がなくなれば、わしはどうやって生きていくんじゃああああ

信仰があってこその神なのにいいい...


「だって、お芽狐さまが外に出ないせいで参拝客が来ないんですよ、みんな、”お芽狐さまの御姿目的”で来てるんで」


えぇ...そうだったんだ...だから外に出ろとか言ってたんだ...


「あと、お芽狐さま、最近お風呂に入ってませんよね?髪の毛ゴワゴワですよ?ちょっとワンちゃんみたいな匂いもするし...しかも、クマもできてるし...絶対夜更かししてるよこれ…」


ひどい言われようじゃ...


「じゃったら、わしがちゃんと風呂に入ってぐっすり寝て外に出るようになればええんじゃな、それで解決じゃなぁ~」


「そう簡単には解決しないんです、お芽狐さまが引きこもっている間にさっき言った参拝客の減少、近年の人口減少・少子高齢化、若者の神社離れなど、複数の問題を抱えているんです。お芽狐さまが外に出たところで参拝客減少の緩和程度にしかならないんです」


えぇ...そんなにひどかったのか...


「じゃ、じゃあ、わしにどうしろと...」


「とりあえず、運営資金が不足してるので、お芽狐さま自らが働きに出たらどうでしょう?そうすれば、資金不足は多少マシになりますよ」


働く...じゃ...と…!?


「なぜ、人間を超越した存在であるわしが人間たちのもとで働かなければならないんじゃ!」


「働かないと、ゲーム類、暖房、冷房を全て撤去しますよ」


マジか、こいつ。ついに暴挙に出やがった。多分今回は本当に撤去されかねないのぅ…


「わ、分かった、働く、働くから撤去だけは勘弁じゃ」


「しっかりと言質とりました、もう言い訳できないですよ」


うぅ…この鬼畜神主が…!少しくらい大目に見てもいいじゃろ!

…けど、一つだけ疑問が…


「のう、神主。わしが働きに行ってる間、参拝客はどうするんじゃ?だって、わし目的で参拝しに来るんじゃろ?何かしらの対策はしているんじゃろうか?」


「もちろん、対策は考えてますよ、ほら」


神主が外の方に指を指した。

そこには、なんか黒くてでっかい箱があった。


なんだこれ?棺か?棺にしては分厚いが…


「なんじゃこりゃ?」


わしらは外に出ると、カンカン照りの明るさに思わず目をめっちゃ細くした。


そういえば、外に出るの久しぶりじゃのう、こんな眩しかったけ…


神主は口を開けると

「この黒い箱は、AI搭載の完全自立型投影装置です」


なるほど、分からん


「こいつはどんなことをするんじゃ?」


「これはこうやって…」


神主がなんとか装置の上あたりをいじりだした。

すると


ピッカアアアアァァ


なんかめっちゃ光りだした。眩しいんじゃけど…


「すごい眩しいんじゃが、引きこもりにこの眩しさは厳しいんじゃが、新しいイジメか?」


「お芽狐さまー、正装に着替えてから装置の前に立って適当に回ってください、あと目は(つぶ)らないようにお願いしますねー」


もう目がつぶれそうじゃ。これ以上近づいたら目玉トぶぞこれ

けど、言われた以上従うしかない


わしは、いじめっ子の神主の指示通りに動きにくい服に着替え、太陽並みに光る装置の前に立って、回った…


2分くらい回り続けていたところ


「データサイシュガカンリョウシマシタ」


と機会音声が聞こえた


喋るとは思わなくてめっちゃビビった、全身の毛が立った

喋るなら喋りますとか言っとけよ…


わしは今にもつぶれそうな目を押さえ、目が回って吐きそうになるのも抑え、しゃがみ込んだ


あぁ、今日は最悪な一日じゃ...なんでこんな目に合わなくてはならないんじゃ…


「ありがとうございます、お芽狐さま。もうどっか行ってもいいですよ。」



…こいつ、わしより少し偉くなったと思って舐め腐ってんな

何か文句を言ってやろうとしたその時


「よし、これでお芽狐さまがいなくてもこの装置がお芽狐さまの代わりをやってくれますよ」


……は?


「ほら、装置を見てください」


ぼんやりと目が(かす)む中、装置の方に目をやると


うん、わしじゃ、わしがいた。


正確に言うならプロジェクトマッピング?とかいうものの立体バージョンでわしが映っていた


「これはー…」


「はい、お芽狐さまに似せた像ですよ」


あれ、わしのアイデンティティが…

崩れていきそうな…

いや、まだじゃ。まだ声は再現できてないじゃろう…


「おい、神主。わしの声は…」


「声も当然再現できてますよ、芽狐さまが知らない間にデータを集めてましたので。半径百メートル以内でしたらどこでも投影できます。あと、振る舞いや容姿なども好きに変えられますよ」


あ、もう、わし要らなくない?


とアイデンティティが音を出して崩れていったところに


「けど、欠点がありまして、それは実体がないという点なんですよね、ただ投影しているだけなんで、もちろん触るなどはできない、ですのでお芽狐さま本人の温かさ(物理)が感じられないっと言ったところですかね」


この言葉で少しだけアイデンティティが修繕出来たような、そんな気がした


もうこれで疑問も無くなったし…本当に働くしかないかのう…

うぅ…働きたくない…!けど、働かないとわしの娯楽がぁ~...!

……よし、決めた!


「神主よ、わし働くぞ!そして、稼いだ収入でゲームに課金するんじゃ!ちょうど推しのキャラのピックアップガチャがあるんじゃ、いやぁ、欲しいんだよなあ。あのスレンダーなボディーと成長途中の乳房が…ぐへへ……おっとヨダレが…」


「まあ、働いてくれれば別にいいんですけど、最優先は運営資金の調達ですからね……」


しばらく間が空いてから神主が言った


「もし、お芽狐さまが働いたら手取りの7割を運営費に充てさせてもらいますね、これでも譲歩した方ですよ、本当は手取りのすべてを充てたいところなんですけど……」


...ふぇ……?手取りの...7割...?


「え、そうじゃったら全然課金できないんじゃ……」


「仕方ないです、そのくらい逼迫(ひっぱく)してるんです」


「じゃ、じゃあ、あの装置はいくらしたんじゃ!」


「ざっと9桁くらい」


ん?9桁?一…十…百…千……億!?

あんな黒箱が億だと!!


「ああああれが、なな無ければ!こここんな逼迫しなかったじゃろ!」


「長い間お芽狐さまの様子を見てましたけど、ずーーーーーっと朝から晩まで引きこもってゲームしかしてないし、コミュニケーションも取ろうともしない、ちーーっとも何にも役にも立ってないんです、そして、収入も減っていく一方なんです、なので、仕方なくお芽狐さまが働かなければならない状況にしたんですよ」


……たしかに、こうでもしなかったらわしはずっと怠けてたな、うん、そうじゃな

働くって言っちゃったしなあ、けど手取り7割か~...うーん…仕方ないか……


「すまんな神主、何の役にも立てずに、むしろ邪魔になってしまって……これからは…ちゃんと働こうと思っておる」


すると、神主は安堵した様子で風船から空気が抜けていくように言った


「ああよかったー、これで働かないって言ってたら、このバールで殴って気絶してる間にどっか工場に送り込んでやろうかと思ってました」


え、この人、思考終わってるじゃろ……しかもわしをバールというチンケな物で勝てると思ってるし

流石に舐めすぎじゃろこれ、わしの恐ろしさを思い知らしてやらんとな…!


と全速力で神主に襲い掛かった


ゴンッ


痛ってぇ~...わしの頭を殴りおったぞこいつ、本当に人間なのかこいつ


「おや、私に勝てると思いましたか?こう見えても私、元々はあなたと同じ神でしたよ」


「どぅええええぇ~~!!!お前、神じゃったの!?」


そういえば、40年くらいの付き合いじゃが……昔の姿と同じじゃな、全然老けとらん


「と言いましても随分昔のことなんですけどね、今はもう人間の身体に馴染んでしまいましたよ」


「な、何で人間に成り下がったんじゃ?」


「穏やかに暮らしたかったんです、それだけが理由ですね。神の時はほんっとうに忙しくて休憩した覚えもありませんでしたよ」


「けど、わしは何も忙しくともないんじゃが……」


「それは、お芽狐さまの立場が低…いや違う、位がとても低…じゃなくて…ピラミッドの地上付近だからなんです」


なんか変な気遣いされたんじゃが…


「私は当時、神のトップ3に入るといわれるくらい凄かったんです、神の仕事は上に上がるほど報酬が豊富になるシステムで、かなりの報酬を貰っていたんですけど、報酬に見合わないくらい忙しくて、最初は耐えてはいたんですけど最終的には何もかも疲れてしまって、もういっそこと…」


どんどん暗くなってきたな、わし、暗い話は苦手じゃから聞きたくないじゃが…話を切り上げないとな


「ああ、もう大体分かったから、過去の話はまた今度にしようかの」


「え…あぁ、分かりました」



…今更思ったんじゃが、”元”神が神主なのはおかしいような気が……まあ、いいか


「では、仕事の件、頼みました。ハロワやネットで調べたら色々あるので、その中から自分に合いそうな仕事・やりたい仕事を選んでください、お芽狐さまが頼みの綱ですからね」


……本当に切羽詰まってんじゃな……って他人事じゃないな、わしの今後の暮らしにも関わってくるのう

はぁ..................とりあえず、仕事探すとするかのぅ..................

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