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悪魔でした。

 ええええええええええ!!!!

 俺は悪魔族の子供ってことか!!??

 しかも大戦で負けた側のか…


 なるほど、これほど質素なわけだ。


 すると、デビスは心配そうな顔をしながら


 「すまない。それほど衝撃を受けるとは思わなかった。嫌だったか?」


しまった。リアクションが3歳児にしては大きすぎた。

 そりゃあ、3歳の時に「うちの家系は日本人と言って、日本語を使うのが普通なの。」的なカミングアウトだ。

 こんだけ驚いてしまうと、嫌な家系に生まれさせてしまったのかと両親が心を痛めてしまう。


 「いえ!ご近所の人たちと違いがなかったので、勝手に人族と考えていました。」


まぁ、本当は悪魔族の置かれている状況やらを理解した上でのリアクションなのだが。

 デビスは手を顎に当て、確かになぁと頷きながら続けた。

 

 「人族、天使族、悪魔族は外観上の違いはないんだ。元々人族との大きな違いの背中にあった大きな羽は、人に受肉した時の弊害で飛べなくなり、退化し無くなったといわれている。」


(えぇ…羽なくなっちゃたんですか。悪魔族の数少なそうなメリットの飛行ができないなんてなんで仕打ちだ。くそぅ。)


 「また、悪魔族は頭に角、天使族の腕には小さな羽があったが、これも人間に受肉したのち、時の流れとともになくなった。おそらく、必要なかったんだな。」


 (まぁ、それはいいか。角なんてあったら寝にくそうだしな。俺は睡眠の邪魔には1番厳しいんだ。)


となると、どうやって見分けるんだ?

 まさか、ステータスオープン的なやつで出てくるのか?


 「その場合、どうやって見分けるの?」

 「この世界の住人は、5歳になると教会に行き神父による鑑定という儀式魔法を受けるんだ。そこでそれぞれの種族に分けられて、自身の証明書、つまりトランである証を作るんだ。それがセルテと呼ばているこのカードだ。」


 そう言って、デビスは1枚長方形のカードを見せてくれた。

 そこには、種族以外にも名前やら職業やら住所やらが書いてあるのだと教えてくれた。


まぁ、つまり、このセルテってやつを見たら大体のことがわかるってことか。

 っていうか、偽造したら天使族にもなれるんじゃね?


 「悪いことを考えてそうな顔だが、種族を騙ることはできないぞ。鑑定の際、自身の血を数滴流し込むことで儀式魔法は完成され、セルテができる。その証明書は本人以外が使用したら、燃え消えることになっているんだ。」

「そんなこと考えてませんよー!」


 (あっぶねー、バレてるし、やる前に教えてくれて良かったー。くそー、魔法は便利だが魔法で生きにくい世の中になっているんだな…)


 「5歳になったらそこに僕も行って、悪魔族という認定を受けるんですね。」

「あぁ、そうだが…トラン、お前は………いや、なんでもない。」


なんだ?歯切れの悪い。さっきの悪事ほんとにすると思ってる?さすがに犯罪めいた事には手を出しませんよ。俺にも良心ってものがありますよ。たぶん。


 「そうだ、もうそろそろトラン、言ってもわからんかもしれんが、お前の弟か妹が生まれてくる。良い例になる兄でいるように頑張るんだぞ。」


そうだ。俺は兄貴になるらしい。

 さすがに前世の記憶もあるため、母のお腹が大きくなっているのが太ってきたなんて思わない。

 我が家は8畳ワンルームだぞ。俺が寝た後に、やることやってるのは気づいたさ。


 童貞の24歳には少し、いやかなり刺激が強くて一睡もできなかったけどな。


 出会いがなかっただけだぞ?ほんとだ。信じてくれ!


 そうじゃないと俺の心がもたないだろ!


 だが、不思議と親のは見たくないと生理的に感じるのか覗こうという気にはならなかった。


 「なんだがよくわからないけど、頑張ります!」


 よし、年齢相応の返しができた。返事だけは一丁前なのは前世通りだ。

デビスはその返事をうんうんと頷きながら、さっきの話に戻るが…といい、


 「悪魔族は光魔法は使えない。これは世界の条理みたいなもんだ。仕方ないと思ってくれ。逆に、天使族に闇魔法は使えないんだが。」


 なるほど。固有魔法みたいなものか。

 悪魔族の固有魔法が闇魔法なのか。そう言う違いはあるんだな。つまり、闇魔法を使えば悪魔族ってバレるわけか。

 

 「闇魔法は危険なものが多いから、教えられるのは魔法四元素の炎魔法、水魔法、土魔法、雷魔法だ。どれから知りたい?」


ほぇー。やっぱり固有魔法なだけあって、闇魔法は強力なんだな。ってことは、おそらく光魔法も強力ってことか。

さて、どれからしてみようか。ってかそんな簡単にできるものなのか?


 「どれでも簡単に僕でもできるの?」

 「そうだな。うちの家系的に…どの魔法も初級ぐらいなら適正はあると思うぞ。」


 (おー!つまり、俺は魔法に秀でた家系なのか!?やっとこういう異世界転生っぽい要素が来たぜ!)


 まぁ、手始めに炎魔法から試してみるか!


 「炎魔法からお願いします!」

「よし、炎魔法からだな。しっかり見ておくんだぞ。」


 こうして、俺の魔法生活は始まったのだった。



°°°



 そうして、1ヶ月の月日が流れた。

 俺は毎日、魔法を教わり、順調に上達している。

 この世界の魔法は詠唱というものをしないでも使うことができ、自身で原理とコツをつかむと無詠唱で魔法が使えるらしい。


 俺は初級魔法の「小火球」、「小水球」、「小土壁」の3元素を使えるまでになった。


 しかし、まだ詠唱なしでは使うことはできず、元が地球という魔法がない星だったためか、コツがうまく掴めきれていない。


 (まだ、魔法を勉強し始めて1ヶ月だ。焦らず、ゆっくりと覚えていこう。)


 家の前で魔法を使うのは危険だということで家の裏にある空き地(とはいっても、ほぼ林みたいなもんだが)で今日も練習に勤しんでいる。


 今日は母であるヘリアに教えてもらっている。この世界では週が6日あり、父親の仕事は半分の3日が勤務日らしい。

 つまり、3日は休みなのだが、俺が毎日魔法を習いたいと駄々をこねたために、母が教えてくれているのだ。

 

 週の半分が休みなんて前世の死んだ顔して満員電車に乗っているサラリーマンたちに聞かせたら泡吹いて倒れるんじゃないか?


 ちなみに、父は近衛兵の仕事をしているらしい。悪魔族が兵士なんか持ってていいのか?という疑問が生まれたが父が答えてくれた。

 

 父の話では悪魔族は天使族によって管理されているのだが、ここは天魔大戦の敗戦国側であるヘイヴン王国のドバス領。

 なんでも、四大天使とかいう偉い人がいて、そのうちの3人が敗戦国であるヘイヴン王国を管理しているらしい。

 

 その3人がヘイヴン王国の国土を三つに分けたうちのドバスという大天使様が管理している領土がこのドバス領というわけだ。

 そして、3人の大天使の下に七大悪魔が就ているらしく、その1人であるテレス様という大悪魔の近衛兵の一番下っ端が父親らしい。


 つまり、大悪魔テレス様もドバス様という大天使様の部下ってわけだ。

 さらに、それの一番下っ端って…頑張れよ父さん…


 うん、それにしてもなかなかに夢がないな。普通の異世界モノなら、悪魔族の族長っぽい大悪魔っていうラスボスがこの世界では部長じゃん。中間管理職じゃん。

 一番辛いってよく聞く役職が大出世ルートかよ。悪魔族ブラックじゃん…


 実際に統治しているのは、大悪魔テレス様らしいが、反乱などの金銭を蓄えさせないために重めの税がかけられているらしい。


 おそらく、この国自体が貧乏国家にされてんだろうな敗戦国ならではの経済状況だ。


 まぁ、不自由はないぐらいの生活は送れているし、おそらく大天使ドバス様は悪徳領主とかではないんだろう。

 そら、天使っていうぐらいだからな…


 「トランー!ちゃんと聞いてるのー?」


 やっべ。そういや魔法の練習中だった。


 「ごめんなさい…ちょっと考え事してた…」

 「だと思った!もう一回言うわよ。無詠唱で魔法を撃つコツが欲しいって言うなら、私があなたの魔力を使って無詠唱であなたの体から魔法を撃ってみるわね。」

 「そんなことできるの!?」


 魔法なんてなんでもありか?ぜひやってみる価値はありそうだ。


 「できるわよ!こう見えてもママ、魔法得意なのよー!その代わり、魔力を使われてもいいような感じで体から力を抜いておくのよ。」

 「わかった!」


 ヘリアは俺の後ろに回って自身の右手を俺の右手と重ね、体から垂直に手を突き出した状態で静止した。

 少しして、俺の体から全身の魔力というべきか不思議な力が手のひらに凝縮して、小さな火球が飛び出した。

 火球はヘロヘロとヘンテコな音を立てるような勢いで3メートルぐらい放物線を描きながら飛んで地面に落ちた。


 なんとも言い難い感覚ではあるが、確実に何かは掴んだ。

 これは、、、イケるぞ!


 「ありがとう!ママ!できる気がする!」

 「あら。さすがトラン。一回で理解するなんてさすがよ!」


 目を閉じて集中する。

 手を突き出し、先ほどの経験を活かしてやってみる。

 全身の魔力を手のひらに凝縮するイメージをひたすらする。


 (あつまれ〜、あつまれ〜、ドッとしてフゥとしてハッ!って感じだ!)


 その時手のひらから少しずつ火が丸く集まるようにではじめる。


 次の瞬間…

 ポゥ。また違うヘンテコな音を立てて小さな火の玉が発射された。


 (ついにできた!苦節1ヶ月、やりきりました!神様!これで僕も立派な魔法使いですよね!)

 

 「すごーい!トラン!ついにやったね!今日はパーティーね!」

 「ありがとうー!ママー!僕ってもしかして才能あるかな!?」


 嬉しくなってつい聞いてしまった。

 

 そう俺が言った途端、少し母の顔色が曇った。あれ?やっぱり戦争とかに駆り出されそうなぐらい才能ありすぎたかこれは?


 「トラン…言いにくいんだけどね、悪魔族、天使族はほとんどの人が最初から無詠唱で魔法が使えるの。」

 「えっ……」


 なんと、俺はまさかの才能ない側だった。

 ここまで努力を大体のやつは最初からできるだと…?


 「でも、心配しないで!最初から使えるってだけで、それ以降の上達には適性とかも相まって差が生まれるから!」


 周りに同世代の子もいないから、比べられないんだよな。



°°°



 さらに、2ヶ月が過ぎ無事に妹が産まれた。ちょうど、天正暦999年が始まった日だ。

 元の世界で言えばお正月に生まれたんだ。すごい縁起がいいんじゃないか?


 「あぅ、あ、あー」


 そういいながら、俺の人差し指をにぎにぎしてくる。

 赤ちゃんってなんでこんな可愛いんだろう。天使みたいじゃないか。もう食べちゃいたいぐらいだ。

 前世では一人っ子だったからな。兄弟ってものに憧れていたんだ。

 しかも、夢にまで見た妹!お兄ちゃんなんて嫌い!って感じのツンツン系に育つのかな?

 はたまた、お兄ちゃん〜ってすぐ甘えてくるあまあま系かな?

 いやー、夢いっぱい!


 何度も言うが、俺はロリコンじゃないぞ!

 少女を愛でたいだけだ!

 そう言えば、転生前に助けた女の子元気かな?

 まぁ、元気だったらいいな!考えても仕方ないしな!

 

 そして、俺の魔法もいい感じだ。才能はなかったが、父親が借りてきてくれた魔導書と言われるものを読んで、少しだけ仕組みが理解できた。


 魔法には4元素あり、炎、水、土、雷がある。

 さらに、それぞれ初級、中級、上級、超級、絶級と分かれるらしい。

 絶級魔法を使えるのは、四大天使と七大悪魔ぐらいらしい。なんと狭き門。

 燃え上がってきました!やってやる!


 魔法は体の中の魔力マナを使って、その性質を変えることで様々な魔法として発現している。また、詠唱は威力、発動タイミング、発動時間、発動条件などなど色々な設定として使われているらしい。


 その設定を頭の中で描ければ無詠唱となり、床や紙に描くと魔法陣として使える。


 ふむふむ。なんで奥が深いんだ!楽しすぎるぞ!


 悪魔族と天使族はほとんどが魔法の才を持って生まれるらしく、実際に一つの魔法も操れないやつはいないに等しいレベルらしい。


 (ふぅ。ひとまず、落ちぶれているとかではなさそうだ。異世界転生して落ちぶれているとかは最悪だからな。

 だが、危険だからか難しい魔法はなかなか教えてくれないしなー。)


 後から聞いた話だが、ほとんどの悪魔族、天使族は5歳までにちゃんとしたレベルの初級魔術を2つぐらい無詠唱で操れるのが平均的らしい。

 言葉を理解して魔法を習得できるようになるのが4,5歳が目安だからだそうだ。


 今の所、俺は3歳で初級魔術を4種類ともできるようになっている。

 ちゃんとしたレベルになっているのは炎、水魔法の2つだけだが…


 無詠唱ができる年齢としては早い方なのだ。だが、ほとんどの悪魔、天使族が習ったらすぐできるらしい。


 (いやー、早めに始めといてよかったなー…

 俺に関しては実質、魔法の英才教育でも進捗は周りよりも少し早いぐらいだな。5歳までに中級魔法ぐらいまで覚えておきたいな…)


 「よし。当面の目標は5歳までに中級魔法を習得だ。頑張るぞー!」

 「いいやる気だ。今日の特訓も始めるか!」


 そのデビスの合図とともに妹の側を離れて、今日も裏の空き地へと向かった。

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