表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷う事なかれ  作者: 秋元智也
9/38

9話 黒い手

あの後、騒ぎは徐々に収束していった。

学校では犯人も捕まり変な噂も消えていった。


ただ、一人を除いては…。


友人の悠馬はあの日以来、眠りっぱなしになっている。

気道を締め付けられて酸素不足で脳の方にもしばらく酸素が回ら

なかったせいだと言っていたが、原因は不明だった。


「どうしてこんな事に…」

『別にいいじゃん。面白いな〜こう言うのって…幽体離脱ってい

 うんだっけ?』


面白そうに目の前をうようよと飛び回っているのが悠馬の霊体だ

った。

あの時、悠馬の霊体が抜けかけたのを渚が取り込んでしまったら

しい。

あの、絵里さんの手のように…。


絵里さんは自分から出てこないのだが、悠馬の方は勝手に出て来

て飛び回っている。

学校でも、家でも、呑気な感じだった。


渚が悩んでいるのを、目の前で浮かんでは壁に頭を突っ込んで遊

んでいるのだ。


「少しは悩めよ!こんな身体になっちゃって…どうやって戻せば

 いいんだよ〜」

『ってかさ〜渚ってまじで幽霊が見えたんだな?』

「信じてなかったのかよ…」

『まぁ〜な!でも、今は信じてるぜ!こうして話してんだから

 さ〜』

「はいはい。でも、このままじゃいつ身体の方が弱るか…」

『今はいいじゃん。楽しいし?』

「今年は受験を控えてるんだぞ?」

『でもさ〜、渚と一緒なら勉強できるじゃん?睡眠学習って

 奴?』


呆れるほど呑気な性格だった。


そして久しぶりに斉藤刑事と待ち合わせをしたのだった。


「霜月くん、久しぶりね」

「斉藤刑事…こんにちわ」

「今は非番だから斉藤でいいわ。」

「はい…」

「本当に申し訳ない事になったわね…彼、まだ目覚めないんだ

 っけ?」

「あ…はい…それなんですけど」

「起きたの?」

「いえ…まだ…」


まさか横に居るとは言いにくかった。

一応は自分のせいだと思っているのだから話した方がいいのだ

ろうか?

しかし、こんな形で生きていると聞いても普通は実感はないだ

ろう。


『別に言わなくてもいいんじゃねーの?』

「…」

「どうしたの?」

「いえ、なんでもない…です」

「そう…近藤勇雄なんだけど、おとなしいもんよ。今取り調べが

 終わったんだけど〜自分がやったと認めて留置所にいるわ。妹

 の絵里さんの死が自殺だったからそれに関わった男、いじめた

 であろう女子もターゲットに上がってたみたいなの」

「そ…それは…」


飲み物を頼むと話し始めた。


「そして、ちょうど3人目の被害者に磯貝悠馬くんが選ばれたって

 わけよ」

「…」

「運がなかったわね。まさか、こんな形で捕まるとは思わなかった

 でしょうね。あの時信じられない力が働いた気がするんだけど…

 君に分かる?」

「いえ…」

「そうよね〜。私には妹の絵里さんが目の前に出て来た時の方がよ

 っぽど驚いたわ。あれは君がやったのよね?」


言われてすぐに返事ができなかった。

またやれと言われてもできる自信がないからだ。


「多分…?」

「まぁ、君ならできてもおかしくないわ。でも、そのおかげで助か

 ったわ。ありがとう。ちゃんと言っておきたかったの」


斉藤さんはタバコに火をつけるとゆっくりと煙を吸い込んだ。


「まぁ〜なんにせよ。事件は片付いたわね…」

「そうですね…」

「悪かったわね。私が単独で動いたせいで、変な噂がたったみたい

 で。弁明に行こうか?」

「大丈夫です…犯人も捕まったし…どうせ僕には信じてくれる友人

 は悠馬しかいないし…」

「彼、早く起きるといいわね…」

「そうですね…」

「もし…伊織に会えるなら…」

「ごめんなさい。あの時は必死だったから…どうやってやったか…」

「そうね…そうよね。変な事言ったわね。忘れてちょうだい」


まさか、優馬が斉藤さんの頭上をふよふよしているとは言えなかった。

事件も解決したが、今日も病院へと寄り道していた。

横に悠馬の霊体を連れて悠馬の身体のお見舞いへと来ていた。


「今からでも、戻れないのか?」

『入れねーんだよな〜。なんか弾かれてさ〜』

「そっか…いつか僕が絶対に戻すからな!」

『頼りにしてるぜ!相棒!』


こうして、身体の前で誓うのだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ