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迷う事なかれ  作者: 秋元智也
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7話 黒い手

誤解を招いたせいで学校へ行きづらくなったので、学校へは斉藤

刑事からちゃんと説明と謝罪をしに行ってもらった。


それでも人の噂は止めれるものではなく、余計に白い目で見られ

るようになった。


「大丈夫か?」

「うん…悠馬、ありがと」

「平気だけどさ〜今度俺が狙われてるって言われてもな〜、実感

 ないんだよな〜」

「誰かと会ったとか言ってたよね?ほら、橋の上で…」

「そういえば…あれ?誰だっけ…」


悠馬の新しくできた彼女の話題になると、どうしても記憶が混乱

するらしい。

これは、なんらかの力が働いているとしか思えなかった。


次の日は悠馬の部屋に行く事になった。


「本当に俺って死ぬのか?」

「それを阻止したいからここに来てるんでしょ?」

「何かあるか?」

「今は彼に任せるしかないわね。私達じゃ、見えないものもあるしね」

「って、なんであんたまで来るんだよ!」


後ろを振り向くと、斉藤刑事までちゃっかり来ていた。


「仕方ないじゃない。これでも刑事よ。被害者を出さない為にはあなた

 を見張るのが一番なのよ!」

「これ…なに?」


ベッドの下から出て来た女性用のピン留めだった。

渚には黒いモヤがこびりついていて、まるで肩に載っている手と連動する

ように反応していた。


「ん?これは…誰のだっけ…えーっと…」


思い出せないのかスマホの写真を探して始めた。

すると一枚の写真で手を止めた。


そこには笑顔で笑う可愛い小柄な女性と悠馬が写っていた。

彼女の髪には目の前にあるピンがついている。


「彼女はどこ!」

「えーーー、エリとは結構前に別れたしな〜〜〜、番号はっと」


エリと書かれた番号をかけてみるが、現在使われてはいなかった。


「ちょっとその写真と番号ひかえさせて。こっちでも調べるわ」

「お願いします。もう、時間が…」


渚がチラッと悠馬を見た。

悠馬はどうなっているのか分からないので余計に不安になる。


「渚〜しっかり言ってくれよ〜、やばいのか?俺、やばいのか?」

「う、うん…ちょっと急いでほしいかも」


渚も一旦家に帰ると誰もいないので、買って来た弁当を食べた。

一息付くと風呂場へと向かう。


あの時消えた手はなんだったのだろう?


断末魔のような悲鳴はただの錯覚だったのだろうか?


湯の中に入るとのんびりと考える。

すると潰した手の平をじっと眺めるとそこから他人の手が生えて来た。


「うわぁァッ!!」


驚いて悲鳴をあげるが、今は腕だけではない。か弱そうな細い腕から

順に体まで出てくる。


悠馬のスマホで見た女性だった。


全身が現れてから改めて見ると、透けていて生きてるようには見えな

かった。


「君は…」

『タスケテ…ユウマ…タスケテ…』

「言いたい事は分かるけど、君がやったんじゃないの?」

『チガウ…オニイチャンガ……キコエテルナラ…タスケテ…』

「分かった。まずは君の名前教えてくれる?」

『コンドウ…エリ…』

「分かったから、なんとかしてみる」


風呂から出ると、彼女は跡形もなく消えていた。


斉藤刑事に電話するとさっきの名前を伝えた。


「コンドウエリ、そう名乗ってたけど、調べられる?お兄さんがいる

 みたいで、お兄さんの居所も調べて欲しいんだけど」

「分かったわ。すぐに調べるわ」

「なんで…どうして、信じてくれるの?」

「何が?」

「だって…こんな現実離れした事、誰も信じないって思ってたから…」

「信じるわよ。伊織姉さんの事、誰にも話した事ないもの」


だからこそ、信じるに値すると言われたのだった。


いつか渚自身も誰かを信じる事ができるだろうか?


次の日には斉藤刑事から連絡を受けて悠馬も連れて喫茶店へと来てい

た。


「分かったのか?」

「ええ、近藤絵里。一ヶ月前に自殺してるわ」

「はぁ?マジか…俺のせいじゃ…ないよな?いきなり彼氏ができたっ

 て言って来たから別れたんだぞ?」

「それなんだけど、今回死亡した男子生徒も彼女と付き合ってたらし

 いのよ。」

「それって‥怨念?」

「違うわ。人間の仕業よ!」


斉藤刑事はその先を話し始めた。


「彼女には肉親が一人いるの。両親を早くに亡くしてから兄が親代わ

 りだったみたいなの。そのお兄さんなんだけど…」

「今、どこに?」


渚には一番知りたい事でもあった。

彼女は死んでいる。

だからこそ、代わりに殺すとしたら兄しかいない。

彼女は悠馬を助けてほしいと言った。

だからこそ、ちゃんと誤解を解いてやりたいと思う。


「少し前にこの近くの駅で目撃されてるわ。今はどこに住んでいるのか

 は分からないわ。」

「もう、時間がないんだっ!」

「渚?」

「悠馬、絶対に一人になるなよ!」

「それは、近いと言うことかしら?」


斉藤刑事の言葉に渚が頷いたのだった。


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