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迷う事なかれ  作者: 秋元智也
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6話 黒い手

学校から帰ってきた霜月渚は自分の部屋に閉じこもった。

親はまだ帰って来ていない。


いや、正確には父親は単身赴任で帰ってこない。

母親はパート中だ。


口煩く言ってはくるが、多分不気味な子供だと思っている。


昔から何もないところで怯えたり、いきなり声を出したりしていた

せいで周りからも不気味がられているのは知っていた。


それでも叔母さんがよく遊んでくれたのを覚えている。

今はコンビニの店長をしていて、たまに小遣い稼ぎでバイトをさせ

てもらっている。


祥子叔母さんは渚を普通に扱ってくれた。

母親ですら、少し遠巻きにしている息子なのに、不思議なものだっ

た。


家にいても辛いだけなので気晴らしに家の外に出ると、昨日の刑事

さんと悠馬がちょうど来たところだった。


「悠馬…どうして?」

「こいつにはっきりアリバイってやつを言ってやれよ!」

「アリバイ?」

「そうだよ!あの事件のあった日のアリバイだよ!」


悠馬が捲し立てるように言うのは、この前死んだ学生の事だろう。

そして、驚く事に昨日叩き落として潰れたはずの黒い手が悠馬の肩

に戻って来ていたのだった。


「どう…して…」

「なんだ?どうしたんだ?」

「いや、なんでも…ない」


潰したのは、意味がなかったのか?

最後の断末魔みたいなのはなんだったのだろう?

分からない事だらけだった。


刑事さんの後ろにも、まだそっくりなお姉さんがくっついている。

後ろのお姉さんが申し訳なさそうに頭を下げて来ていた。


「あなたは…」

「どこ見てるんだ?」

「なんでもないよ。僕を疑ってる人に何を言っても無駄じゃないの?」

「そんな事ねーよ!お前は絶対に殺しなんかしねー!」


悠馬だけは、渚を知っているせいか、味方でいてくれる。

だからこそ、悠馬は助けたいと思える。


「犯人を捕まえれば疑いが晴れるんですよね?」

「何か知ってるの?」

「知りませんよ。でも…犯人を捕まえる方法ならわかりそうです」

「ん?」


渚は頷くと家の招き入れた。

玄関で話していい内容ではないからだった。


「その前に一つ聞かせて。昨日の事よ」

「それはお姉さんの後ろにいる人の事ですよね?」

「誰がいるの?」


真剣に聞いてくれるのは初めてだった。


「あなたにそっくりな女性です。えーっと、伊織さんって言うん

 ですか?」

「どうしてその名前を…言った覚えはないけど…」

「彼女が言ってます。お姉さんなんでしょ?自分は恨んでないと

 伝えてほしいと。」

「…そう、そんな事を。伊織らしい…」


何か考え込む斉藤刑事の横で、訳が分からないと言う悠馬が話が

見えないでいた。


「あなたは、幽霊が見えるってっ事でいいのね?」

「はい」

「話もできるのね?」

「それは…人によってです。」

「そう、なら。犯人がわかるかもって言うのは?」

「死んだあの人は何度もバイト先のコンビニに来てたんです。その

 度に手が…黒いモヤに包まれた手が彼の肩に付いていたんです」


「なんだよそれ…気持ち悪りぃ〜な」


悠馬が言うと、肩の手が力を込めるのが見えた。


「悠馬、肩が重いって言ってたよね?」

「あぁ。こないだ渚が触ったら楽になったんだけどよ〜あのあとま

 た…」

「その手が悠馬の肩にもいるんです。多分同じものかと…」

「それは、今度のターゲットは彼と言うことか?」

「おそらくは…」


渚の言葉に、驚くと視線が集まる。

斉藤刑事は彼の肩をポンポンと叩くが、すり抜けるだけで消えやし

ない。


「今は、どうなっている?」

「まだ、悠馬の肩に…」

「マジかよ〜、なんとかなんねーのかよ!」

「見えるのは渚くんだけなの?」

「多分…あの日、最後に見た時は首を締め付ける手が見えたんです」


「確かに…溺死と言ってはいるが、実際には絞殺されてから川に捨て

 られたという見立てだった…」

「それって幽霊に呪い殺されたって事か?」

「いや…多分、犯人は生きてると思う。一回悠馬から取った時、すご

 い勢いで追いかけて来てたし…」


学校での事を話した。

悠馬がどこかで出会ったであろう女性、もしくは男性の恨みを買って

呪われていると考えるのが正しい気がするのだった。

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