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迷う事なかれ  作者: 秋元智也
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4話 黒い手

ピンポーン…ピンポーン。


「はーい。」

「あ、すいませーん、隣のものですけど〜」


ガチャっとドアが開くて中からは普通にこ綺麗な女性が出てきた。


「一体なんですか?」

「えーっと…」


話している隙に渚が一気にドアを押し除けて中へと侵入した。

靴を脱いでいる暇なんてない。

捕まって放り出される前に目的を果たさねければならない。


中に入ると幽霊のお姉さんがこっちとでも言うように部屋の中を

案内して来た。


そして寝室の前に来ると指を刺した。


思いっきり中に入ったが誰も居なかった。


追いつくように警察のお姉さんと家主が来て何か言いたげに顔を

歪めていた。


「ちょっと!あなたなんですか、いきなり…出て行って下さい。

 警察呼びますよ!」

「あの、私警察なんで!」


そういうと、目の前で警察手帳を取り出した。

驚いたのは家主の方でもあった。

何かやましい事でもあるのか、目を合わせ良いともしない。


そのうちに幽霊のお姉さんが仕切りに押入れに首を突っ込んだ。

手招きするように渚になに訴えててくる。


渚はすぐに押入れを開けた。


「やめて!そこは開けなで!」


突然大声を出して飛びかかる女性を取り押さえるとそこにはまだ

幼い子供がぐったりとして入っていた。


全身殴られた跡があり、さっきまで叩かれていたであろう傷も見

受けられたのだった。


「これはどう言う事ですか?」

「署で話を聞かせてもらえますか?」

「違う…違うの…私じゃない、これはあの子が悪いのよ…」


泣き崩れるように母親である女性が観念すると、子供はすぐに

病院へと運ばれていった。

命に別状はないものの、あのまま放置されていたらと思うと…

ゾッとする。


 


斉藤奈緒、彼女には昔から仲のいい姉がいた。

警察学校へいく奈緒と違って伊織は家庭的で恨まれるような事

は決してなかった。


「いつか凶悪犯を捕まえて表彰されてさ〜、女で初の警視総監

 になるんだ〜」

「奈緒はいつもそればっかだね〜」

「うん、私より弱い男ばっかだしね。私が偉くなってやるんだ。

 世の中の男どもを見返してやるんだ〜」


そう言っていた時が一番充実していた気がする。


それから3年、街のごろつきを謙虚してはちょこちょこと成績を

伸ばしていった。


麻薬の取り締まりにも一役かった。

下っ端しか捕まえられなかったけど、それでも大きな物取りに

なった。


署で盛り上がり、その足で家に帰った。

その日はちょうど暑い真夏の盛りだったのを覚えている。


前日に伊織が婚約者を紹介したいと言われ、早く帰って来てと

言われたのに、いきなりの物取りが入って夜遅くまでかかって

しまった。


もう、伊織の婚約者は帰っただろうと思って家に帰ったのを覚

えている。


斉藤家では早くに父親を亡くしていたので母親だけしかいない。

奈緒と伊織はそっくりな姉妹だったので親ですら見分けはつか

なかった。


「ただいま〜」


鎮まり帰った家の中で開け放たれたドアに電気の消えた室内。


蒸し暑い中で横切る血の臭い。

現場で嫌と言うほど嗅ぎ慣れた臭い。


目を見開くと、靴も脱がずに駆け出していた。


電気を付けるとそこには血だらけになった伊織とその婚約者であ

ろう男性。

その奥のキッチンでは母親の死体が転がっていたのだった。


もっと早く帰って来ていれば…

これほど後悔した事はなかった。


伊織のお腹の中には…子供がいたらしい。

死亡推定時刻はちょうど奈緒が署で酒を飲んでいる時間だったと

いう。

あの時、すぐに帰っていれば。


事件が片付いてすぐにそのまま帰っていれば…


後悔はしても、過去か変えられない。

しかし、今日、助けられた命がある。

少し強引だったが、あの青年の言葉を信じたおかげで一つの命が

救われたのだ。


なぜ、あんな事を言ったのだろう?

奈緒は不思議に思う。


嫌々だったが、最後まで付き合ってくれた。

そして、押し入れに入った幼女を見つけたのも、迷いはなかった。

そこにいる事を知っているかの様な手つきだった。





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