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迷う事なかれ  作者: 秋元智也
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1話 黒い手

夜の静かなコンビニはあまり人が通らないので気楽だった。


「ごめんね〜まだ学生さんなのに深夜のバイト頼んじゃって〜」

「別に大丈夫ですよ。家、近いんで…」

「そう?助かってるわ。主人がいきなり呼び出しがかかるんだ

 もの〜、それじゃ〜お願いね!朝の5時には河合ちゃんが来

 るからそれまででいいからね〜」

「はい、気をつけて行ってらしゃ〜い」


見送るのはこのコンビニの責任者でもあり、オーナーでもある

狩野祥子だ。

さっき朝に来ると言うのは同じアルバイトの河合静香。

こちらは今年で30になると言う主婦らしい。


見た目はそうは見えないが、実際はそうだと話していたのを聞

いた。


霜月渚、彼は近くの家に住んでいて狩野祥子とは知り合いでも

あった。

母親の知り合いとあって、たまにバイトを頼まれるのだ。


今年受験生とあって本当は無理には頼みたくなかったのだが、

なにぶん人がいないので、どうしてもと頼まれたのだった。


今年高校3年とあってか、受験生である渚が小遣い稼ぎついで

に働いているのには理由があった。


親にはいないものとして扱われていた渚はこの家の厄介者でしか

ない。だからこそ、早くこの家を出て自立したいという考えの渚

に、絶好のタイミングでバイトを持ってきた祥子おばさんには感

謝しかない。


最近は親に内緒でバイトのシフトに入っている。

多分気づいていても、気にも止められないだろう。


「お!渚じゃん!受験生がこんな時間までバイトしてていいの

 か〜?」

「!?」


いきなり声をかけられて驚いたが、よく見ると幼馴染の磯貝悠

馬だった。

その隣には知らない女性が立っていた。


「なんだよ〜こんな時間に…悠馬だってこんな時間にうろつい

 てていいのか?」

「ははっはっ、聞きたいか?それはな〜。コレを買いに来たん

 だよぉ〜」


自信満々にレジに出したのはゴムとローションだった。


「…温めますか?」

「おいおい、温める訳ねーだろ!」


冗談がてらにレンジに入れようとするのを必死で止めてきた。


「冗談だって。悠馬も受験生だろ?いいのかよ?」

「大丈夫だって〜、俺今年就職するし〜」

「受験しないのか?」

「あぁ、勉強苦手だしな〜、渚ほど頭よくねーだろ?俺は…」

「確かに…」

「おいおい、生意気な店員だな〜。まぁいいや。会計よろしく!」


笑いながら会計をしてレジ袋に詰めると渡してやる。

これからお楽しみなのだろう。


何気なしに悠馬を見上げるといきなり背筋が凍るような、ゾクっ

とした。


まるで何か恐ろしいものに睨まれた気がしたのだ。


手に持った袋が滑り落ち床に落ちた。


「おいおい、落とすなって…渚?」

「あ…いや……悠馬、お前……」

「どうした?なんか顔色悪いぞ?体調悪いのか?」


手を差し出す悠馬に、怖くて後ずさった。


悠馬の肩に真っ黒な手が乗っているのだ。

それもただ、どす黒いオーラを纏った手なのだ。


それが、差し出された悠馬の手に重なるように黒いものが纏わり

つくように見えた。


「何かあったのか?」

「な…なんでも…ないよ?ご、ごめん…なんか急に気分悪いかも…」

「おいおい、大丈夫か?そう言う時はバイト休めよ!」

「そ、そうだな…うん、そうするよ…」


様子のおかしい渚を置いて悠馬は買い物を終えて出て行く。

隣にいる女性を見上げるが顔が分からない。


ただ、緊張して見えないわけではない。

本当に顔だけが見えないのだ。


「なんなんだよ…今の…」


渚にも全く理解できなかった。

悠馬が去った後でやっと落ち着きを取り戻すと、次第に明るくな

ってきた。


5時前に河合静香がやってきたので、交代すると家に帰ってきた。


少し仮眠をすると学校へと向かうのだった。

学校ではいつも以上に騒がしかった。


「おう、渚〜昨日は大丈夫だったか?」

「うわぁっ!」

「なっ!なんだよ大声出して〜」

「ご、ごめん…」


まさか、優馬の肩に変な黒い手がついているなんて言えない。

多分誰にも見えていないのだから。

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