第1章 枕と異世界!?
三大欲求の一つである、睡眠欲。
夢の中では、誰しもが、ヒーローや英雄、アイドル、王などの理想的な自分になれる。それを可能にするのが睡眠欲であり。『寝る』ということだ。
が!、よく考えてみてほしい、君たちは、夢の中で見たことを明確に覚えているだろうか?
覚えていないだろう。覚えていてもそんなのほんの一瞬だ。
僕もそうだった、あの日までは!
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1章 枕と異世界!?
僕の名前は、眠山 徹。 寝ることが大好きな、高校2年生だ。座右の銘は『花より、睡眠』。
そんな、僕は現在、深刻な問題に直面している。何に悩んでるかって?いいだろう教えてあげよう。
僕が、抱えている悩み。それは……
『熟睡できる枕が見つからない!』だ!
この問題は、昔からずっと抱えていたわけではない。ここ最近になって忍びの如く、突如として現れたのだ。きっと、今までの素晴らしい熟睡のせいで、体が成長したのが原因なんだろう。とはいえ、今まで使ってきた枕をそう簡単に手放せるわけもない。だが、もう我慢に限界が来ていた。
そして今日ついに新しい枕を探すために立ち上がったのだ!
そんなこんなで、現在僕は、あの大手枕企業のラトリに来ている。ここは、枕専門家(自称)である僕が認めている数少ない店の一つだ。
「いらっしゃいませ~」
店に入った途端にこの美しく、ちょっとヴィヴラートの乗った声を聴くことができる。ここも、評価の一つだ。
ただ、そんな店でもアクシデントの一つや二つはあるものだ。なんとびっくり、僕が入った途端、強盗がやってきました~。あはははははははは~~~……
「はー------!?」
つい勢いで叫んでしまった。感情が高ぶると叫んでしまう癖、なおさないとなー。 じゃねぇよ!
どうするか考えねぇと。と、その時
「おい、あんだろあの枕がよ~」
強盗が店員さんに怒鳴りつける。店員さんは、
「知りません……」
と言っているが、何か知っているような感じだ。
で僕はというと、強盗に話しかけていた。常人から見たら何やってんのこいつ?、と思われるだろう。だが僕は聞き逃さなかった、強盗の言葉を。強盗は確かにこういった「あんだろ、あの枕」と。
枕専門家(自称)である僕にとって枕は宝物に等しい。そんなものをあんな下賤な強盗に渡してたまるか。あと、強盗が狙うような枕だきっと何かすごいに違いない。
僕は、そんな自分のプライドと好奇心が混ざった奇妙な感覚に従い、強盗に話しかけた。
「あの~、あなたが探している枕ってどんな物なんですか?」
「誰だてめぇ、なめた真似してると殺すぞ」
「いや~睡眠好きで枕好きとしては、気になってしょうがないんですよ~、だから、教えてくれません?」
「どうやら,死にてぇようだな。そんなに寝ることが好きなら寝かせてやるよ、永遠にな」
そういって強盗は笑いながら、懐から拳銃を取り出し、僕の額に突き付けた。
「またまた、ご冗談を。そんなことより教えてくれません?枕のこと」
枕のことに夢中だった僕は、死ぬということを一切意識していなかった。だが、その一言が強盗の我満メーターをマックスにさせてしまったらしい。
「後悔すんなよ、、、」
そういって強盗は拳銃の引き金に指を置きゆっくりと引いていった。その時だった、警察が突如として飛び込んできたのだ。たぶん、強盗が僕に意識をそらしている間に店員さんが通報したのだろう。
ナイス!店員さん!
それからは警察のおかげであっという間だった。僕は、連行間際にあの強盗に尋ねた。
「結局、あなたが求めていた枕って何だったんですか」
強盗は、僕のしつこさに負けたのか渋々答えてくれた。
「あの枕は、異世界に行くことができる、俺も詳しいことは知らん。知っているのはこれくらいだ」
僕は、驚いた。枕専門家(自称)である僕でもそんな枕のことは今日初めて知った。そして、
「そんな枕、欲しいに決まっているじゃあないか! 強盗君、君の気持ちはよーく分かった。君の分までこの僕が存分にその枕を使いまくってやろう!!」と、強盗君の意思を継ぐことを決めたのだった。
この時にはもう、当初の目的であった寝心地のいいとかどうのこうのは忘れていて、ただ、その枕が欲しいという一心だった。
だが僕は、盗むとかいう野蛮な手口は使わない。僕にはとっておきの奥義があるのだ。その名も……
『母性をくすぐる、視線ビーム』だ、これに勝てたものはいままで一度もいない、そして今回もあっさり勝てると思った。しかし、僕の予想はあっさりと覆された
「そんな可愛い視線を当てても無駄よ」
と、店員さんは言う
「えぇー--ー、どうしてもだめ?」
店員さんは考えこみ、そして話し出した。
「この枕のことは、もう強盗から聞いたのね?」
「はい!」
「なら話は早いわ。強盗が言っていた通りこの枕は、異世界に行くことができる。」
「やっぱりそうなんだ!すごいや」
「ここであなたに頼みがあるの」
「頼み?」
「えぇそうよ。現在、異世界から抜け出すことができなくなる若者が増えている、その原因をあなたに突き止めてほしいの。もし突き止めてくれるのなら、この枕を譲ってあげてもいいわ」
いつの間にか、店員さんの右手には枕があった。僕は、一切迷わず決めた。
「やってやりますよ!原因を絶対突き止めてやります!」
そう言い切ると、店員さんは。
「フフ、頼りにしてるわ」
と言い、枕を僕に渡してくれた。
「今日は、どっと疲れた」
ここは、僕の部屋のベッドの上、早速今日もらった枕に頭を乗せ、この枕のことやら、あの店員さんは何者だったのやらなど様々なことを考えていた。
そんなことを考えている内に、僕は、睡魔に負けて寝てしまったらしい。そして気が付いたら……
広大な草原が目の前に広がっていた!!