4 俺の気持ちは
勇気と2人で麻美の家に見舞いに行き、長居はせずに帰って来た。
麻美は勇気が見舞いに来たので喜んでいた。
俺は……。俺はどうすれば良かった?
麻美の事を考えれば、勇気に言うべきだっただろう。
麻美は勇気の事を想っている、ちゃんと向き合えと。
勇気は俺の言う事は割と聞くから、俺の言う通りにするかもしれない。
麻美は勇気と付き合えるかもしれない。
だが、勇気の話を聞く限り、本気で麻美の事が好きとは思えなかった。
俺の方が…。けど、麻美は……。
答えは出なかった。
翌日、麻美は復活した。
「おはよう!龍くん、昨日はありがとね!」
「いや、大したもの買って行ってやれなくて悪かったな。もう平気なのか?」
「うん、熱も下がったし、大丈夫!」
「もう1日休んでも良かったんじゃない?」
「ううん、本当にもう大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね、勇くん。」
それからまたいつもの日常が始まった。
むぅ、今日の弁当はアジの開き、白身魚のフライ、茄子のバター焼き、サラダ、か。
魚メインで、味付けも勇気好みの薄味になってる。
夜麻美が俺の家に来て、弁当の感想と恋愛相談を続けていると、2人で色々話した。
「私はお料理が好きだから、将来は小さい居酒屋とか小料理屋とかやりたいんだよね!」
「あぁ、麻美は元気で可愛いし、料理も上手いから人気出そうだな。」
「えっ…。い、いきなり褒めるからびっくりしたよ、もう!」
「?俺は思ったことを言っただけだぞ?」
「もう…。私よりも龍くんはどうするの?将来は。」
「俺は格闘家だな。まぁ、そんなに簡単じゃないことはわかってるが。」
「そっか。格闘家かぁ。そうだよね、龍くん真剣にキックボクシングやってるもんね!」
「あぁ、ジムの人達はみんないい人ばかりだし。」
「龍くん、中学の頃は喧嘩ばっかりしてたもんね!高校に入ってからはしてないもんね!」
「あぁ、麻美や勇気とも約束したしな。ジムの人達の事も裏切れないし。」
「心配したんだよ!喧嘩で救急車で運ばれたって聞いたときは!」
「あれで懲りたよ。流石に相手が多すぎた。麻美や勇気に泣かれるのもキツかった。」
「懲りてくれたなら、泣いた甲斐もあったかな?龍くんは強いけど、いつか大怪我するんじゃないかって心配だったし。」
「あの頃は自分がどれだけ強いのか試したくてしょうがなかったんだよ。」
「龍くんの事心配する人一杯いるんだからね?」
「わかってるよ。もう喧嘩はしねぇよ。大丈夫。」
麻美と2人で話すこの時間は幸せだった。
麻美が勇気の事を好きだとわかっていても。