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第四話 最初の…

―――話しかけてもらうことは嫌じゃないと思うんだけど、んー、どうすりゃいいかな?


  その場で立ち止まってしまう俺だが後ろから中谷が歩み寄り小声で「ちょいちょい」と招くと、心配そうに囁く。


「急にどうした? 勇気ある行動は讃えるが、お前らしくないぞ。篠崎さんにそんな興味あるのか?」


  今までは女子とは話しかけられない限り喋らないキャラだったのに、と一言余計な中谷を一発こづき、俺はわけを説明する。そこで漸く、納得したのか理解を示しながらもやんわりと忠告を入れてきた。


 なんでも、俺と中谷は一年の頃は違うクラスなのだが、中谷と篠崎さんは同じクラスだったらしく彼女は一年の頃からこういった態度を貫いてきたとのこと。


 それがクラスから学年に広がり二年に上がった時点で孤独を迫られていたようだ。


「なるほどな。話しかけられてあんな対応しかできない、物理的にか」

「そういうこと。……それと、もう一つ。今はあんま行動を起こさないようにしろ」


 視線を方向転換して一つの固まった女子グループに目をやる中谷。目線に釣られると、二人揃って同一の方角に正対した。


 先には此方の様子を伺う元一緒の B 組クラスメイト、長山ながやま陽葵ひまり。通称ナガッチ。しょっちゅう自分に話しかけてきた気の強い女子とはこの女のことで、黒髪のロングヘアに気のきつい目つきをした高身長関西弁女子である。


 胡散臭いぐらい評判が統一されており、昨年は積極的に話しかけられそのスタンスに嫌気が刺した。今年は接点を持ちたくないが現実的に厳しいと思っている。

気難しいそうに顔を曇らせる俺に、中谷が気怠けにしていた。


「ああいうタイプは俺と合わない。つうか苦手だし」

「そうなんだよなあ。それが惜しいというか勿体ないというか……なんというかなあ」


 中谷は俺と長山を交互に見比べ、やれやれと態度で示す。最近こういった素振りをするが何を思ってるのかさっぱり、なので無意識の内に篠崎さんに視線を預けた。彼女はより一層本に顔を埋めて超至近距離で読書? の最中っぽい。どう捉えても本を読める体勢ではなく、完璧に気が逸れた風に見受けられる。


―――まるで本を盾にしている……ってか、あれなんのラノベだ?


 女子が愛読する本には、切実に探究心が沸いてくる。やはり先刻のタイミングで質問するのが正しかったのかもしれ、いやでもラノベをカバー付けて読んでる奴は大抵突ついてほしくはないから……。


 言葉を巡らせながら、疑問を粗いじっと考えるが判断がつかない。何分か経って頭部を振りかぶれば、中谷は既に自席に戻っておりその数秒後にチャイムが鳴り響いた。この次は終了ミーティングであり、それが去れば午前下校となる。


 色々とあったが、こうして俺の二学年初の初日登校は終了に近づき、………… すぐに遠ざかって行った。


「ふんふんふん」


 鼻歌まじりに図書室のラノベコーナーを歩き回る女子生徒。目撃したのは、俺が滞納していた貸出本を一気に返却している時だった。



*****



〈謎の二人組〉


  目を閉じ、黙祷をするかの如く集中して高台に佇む少女。彼女の頭には様々な思惑が交差する。


―――能力を常時使用している? 能力については分からないけど、なんとなく自覚しているみたいっぽい。ほぼ全員がその影響を受けているけど、……あの生徒だけ彼女に好意的じゃない? 気のせい、いや流石にそれは……


「いやあ、存分楽しめたわい」

「……遅い。何してたの」


 一瞬で出てきた老人に呆れた目線を向ける。とんがり帽子をポリポリと掻きながら彼はただ一言。


「学校に紛れて目標の観察に」

「本当は?」

「うら若い女子生徒の観察をー」

「リーダーに減給してもらおう」

「ひょええええええッ⁉︎ 待った、ちょい待った、ミィ! 実はかなり有意義な情報も確認できたのじゃ!」


 老人は両手を振りながら大慌てで弁解を始める。


「そ、そう。あれじゃあれ。目標のクラスの担任。態度が昨年とえらく違うともっぱらのうわさなんじゃよ! もしかすればあの男、何か企んでるのかも」

「サボりの狂言なんて聞くに値しない」

「ぐ!?」


 大げさに胸元を握りながら膝から崩れ落ちる老人。「仕事の邪魔をされた」と呟いて、少女は任務を再開した。


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