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第三十五話 推察

〈執行人の二人組〉


 話は昨日の長山と雲斎がけんかした直後まで遡る。

 場所は屋上、二人の人間が話し合う。


「で、結局どうするの?」

「敵の寝首を掻く」

「第三者ってのは否定してたけど…」

「数える程度しかいない、わしらの隙をつける奴に先手を越されたんじゃよ」


 舌を噛みながらそう告げた途端、はあーと呆れた動作を催す少女。「寝首を掻くって具体的に?」とジト目で問いただす彼女に、もう一方がしわがれた唇を開口する。


「長山陽葵の能力を覚えておるか?」

「他者が持つ自分への好感度を思うがままに上昇させる、だっけ?」

「そう。長山はそれ以上のことは何もできない。あくまで推測じゃが長山陽葵の居場所が感知できぬのも、上と連絡取れんのも、十中八九学校に忍び込んだ敵の仕業じゃ」

 

 老人が言った刹那、少女がハッとする。


「なら、今のうちに長山陽葵を保護、」

「やめておけ。どうせもう敵に付け込まれとる」

「一回本部に帰るという選択肢は…?」

「わしらが帰ったとなっては敵がどんな手段に転じてくるか」

 

 うー、と頭を凹ます少女。ここである質疑を投げかける。


「のうミィよ、長山陽葵の能力を上手く応用させれば何ができると思う?」

「好感度を上げるだけの能力を?」

 

 静かに頷く爺さんの考えを読み解こうと少女は更に考える。


―――好感度を上げる……、まさか!


「……従順……親愛…………服従ってこと?」

「正解。つまり黒幕は長山陽葵を裏につき、学校近辺の人間を牛耳ろうとしておる、っていうのがわしの推理じゃ。どうじゃ、それっぽいか?」

「ぜーんぜん」

「なんと‼︎」

 

 微妙に悔しがる爺さんに彼女は穴を突く。


「黒幕が居るってのは悪くないと思う。そうなれば敵は魔道具か何かで長山の能力を強化してるってことになる。でもそれだと、さっき言ってた人間を牛耳るってのが変じゃない。そんな大それたことするならもっとマシな動機があると思う」

「動機…か」

 

 ふうむ、と悩ませる彼の頭は再度この任務の通達内容が浮かばせた。

 

「……長山陽葵を保護、できる限り人前での能力行使は避けるべき。会話で解決する、能力での強行は最終手段とする、指揮官への連絡…あとは、………ん! そういえば…!!」

 

 急いでポケットに手を入れる老人。中に入っていた物体を次々と飛ばしていく。


「これじゃない、これでもない、ええっと…のう、あった!!!」


 ティッシュ、レシート、免許証の次に出てきたのは、クシャクシャに丸められた紙切れ。


「…今月の任務予定表?」

 

 何故こんなにも汚いのか、と言いたげに少女の視線を寄るが、そんなもの知ったことではなかった。老人はすぐさま今日の予定を見つけ、続けてその三日後を指差した。


「ミィ、これを見ろ」

「ん…予定、先日訪れた公立西山高等学校の生徒、篠崎紬希を保護。彼女の能力は『シャットアウト』、能力者の能力を消すことができる極めて珍しい能力のため、数日前に分かったばかりだが予定に組み込むことにした……。ねえ、これって」

「ツキが回ってきたな。わしの記憶力に感謝せい!」

「大金星」

 

 にやけ面を作りながら、彼は話を共有する。


「おそらく、敵の狙いは篠崎紬希。彼女を長山陽葵の能力で操り所有する」

「そして二人とも頂く、と」

「一度に能力者を二人手駒にできる。敵ながらあっぱれじゃ」

「そんなこと言ってる暇ない。急いで、篠崎紬希の保護を」

 

 目を瞑り能力を使用する少女は、即刻篠崎の居場所を感知する。能力の使用ではなく長山にだけ感知できなくなっていたらしい。彼女は老人に言う。


「篠崎紬希の場所は屋上。今はそこにいる」

「瞬間移動で向かう。タロットカードはあるか?」

「うん」

 

 少女は一枚の角張ったカードを手渡す。


「魔道具の使い方、知ってるかな?」

「知らないからこれを渡す。能力者なら誰でも使える武器になりうるからな、これで彼女の事を守ってくれるじゃろう」

 

 そう言って、老人は途切れた。

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