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第三話 変わった人

「人生で初めて自分の苗字を恨んだ」

「誰も気にして無いから大丈夫だと思うけどな。……どん詰まりしてたのは笑っ

たけど」

「お前、慰めてるフリして実は馬鹿にしたいだけじゃね」


 ご名答、とハイテンションに振る舞う中谷。普段なら流せる言動も自身の神経を逆撫でされてる気分だ。挙動不審ながらも名前と誕生日と趣味を言ったのだけは褒めて欲しいのだが、担任に「お前はそんなじか」と、心配されたのは我ながら恥ずかしかった。


って言うより、ああいう場はなるべく後の順番になって回りの雰囲気に目を配りながら慎重に自己紹介の内容を決めていくものじゃないか。

 それを真ん中の人間に立たせて、ましては当てるなんて去年以上に担任が嫌いになりそうだ。 と、俺の暗い空気が伝わったのか中谷が頭にチョップをかまされる。

 

 「あいた」、と頭部を押さえると割と真剣な目つきが目前。


「最初の態度なんていくらでも取り返せるだろ。で、どうだ。うちのクラスの感想は」

「感想……? 自己紹介ってみんな自分偽ってるからあんま理解できないもんじゃない?」

「その紹介内容に興味のある内容があるかって聞いてるんだ。男子はともかく、女子で関われそうな奴、一人ぐらい居たか?」


 中谷の言葉に前十分ぐらいを振り返る。関われそうなやつ、仲良くなれそうな

やつ…………、


「あ、いたわ」

「マジか!?」


俺は半分頷きながら担任の長話の時に見つけた女子を探す。

 

 最初に気になった女子、確か篠崎紬しのざきつむ……っと言ってた気がする。自身の発表直後は悶え苦しんでいたため、あまり誰が誰だか解らないが彼女はだいぶ自己紹介が離れていたので内容も把握できた。

 趣味が読書で暇な時は寝てるとかいうシンプルな台詞も記憶している理由の一つ。


―――あの人はいったいどこら辺に…ん? 集団で集まってる女子には見当たらないけど………、ああいたいた。


 その時、常識的に考えておかしいと思ったのは俺だけではなかったはずだ。クラスメイトが和気藹々と話し笑う中、一人乖離する女子生徒篠崎さん。ラノベが手元にある辺りひょっとしてと思ったが察した風にまとめて、俗に言うぼっちとはああいうのを表すかもしれない。


  高圧的なオーラはバチバチと壁を形成し、まるで自分の領域みたく過ごし読書以外受け入れないあの姿勢。高校生とは感じない純粋に奇異に見えるその様は、思わず俺の内側から何かを込み上げさせた。


―――もしかしたら興味を持った原因は机の上のラノベじゃないのかもな。


「中谷」

「ん?」

「ちと席外す」


他の生徒が話しかけづらそうにしている最中、俺は堂々と彼女の元へ足を向かわせた。席は言うほど遠くない。何気に自分から女子に関わりに行くことが初めてかもしれなかった。友達と教室を移動する時となんら変わりないスピードで歩き、目的の篠崎さんのところまでたどり着く。


 彼女は本から目を離さないため、外野の存在はどうでもいいかもしれ………いや、ちらちらと一瞬の隙に此方を伺うあたりそれはないのか、俺は勝手に確証つけた。


「大丈夫か?」

「………何が?」


間はあったが返事を返してくれたことに若干の安堵を覚える。硬い口調、だけど構わず質問を続けた。


「いや、クラスメイトが初めて集まったのに誰とも喋らない篠崎さんが気になって」

「………あなたには関係ない」

「そう見えないんだが。それとあなたじゃなくて西岡。樹って呼んでくれてもい

いけど」

「名前なんてどうでもいい。私、今本読んでるの。邪魔しないで」


 言ったっきりそっぽを向いてしまう彼女。手を振ったり声を出したりしてみたが今度は本気で無視されてしまった。


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