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第二十七話 何者

「誰だアンタ! どこから入ってきやがった」

「名は名乗れんが、後者は明かしてやろう」


 瞬く隙に、老人の身体がブレる。どこ行った、と四方を遠望する俺に背後から肩を叩いてくる手。


「っ、!」

「瞬間移動と」


 調子良さそうなジジイの声色に俺は右手を方向転換させ、思い切り回す。


 「な!?」


 スカッと空を切る音。またか、と思い自分の手に振り向くとやつはそこにいる。どうやら、長さで後数十センチ届かなかったらしい。舌打ちをする俺にじじいは「カッカ」っと笑いながら胸うちで泣きぼくろをつくる篠崎さんに目を向けた。


「辛いじゃろうが、我慢あるのみ。同じ思いをさせてしまうわしらを許しておくれ」

「……え?」

「何言ってんだ、この変質者」


 先刻まで泣いていたのが捉えられてたのか。しわくちゃの顔を更にくっしゃくしゃにして近づくじじいに睨みを効かせる。

それを見てじじいは面白そうな顔をした。


「随分と、大切にされてるのう。なんじゃ、お主らは俗に言うリア充か?」

「んな!?」


 じじいから予想だにしない言語が飛び出し、内心パニックに陥る。


「ち、違う。俺らは友達だ。ちょっとした約束を交わしただけの」

「ちょっとした約束をした程度でお主らは抱き合うのか?」


 ハッと現状を理解する。途中から自覚は無かったが今の今まで俺たちは抱き合っていた、その事に気付き今頃になって羞恥心が芽生え出す。


「西岡くん、あのそろそろー」

「あ、悪い、」


 腕組みを解き、パッと離れていく篠崎さんを眺める。少々近づきすぎたのかもしれない。


「西岡、くん?」


 不安げにこっちを見てくる彼女に、大丈夫と告げ知らせる。そしてとんがり帽子の老人と向き合った。


「お前、何者だ」

「爺さんでかまわん。わしは……警察官みたいなものか?、、つってもわしみたいな者は、ほんの少しの人間に存続する可能性を事前に封じておくのが仕事じゃが」


 言い終わると、爺さんは被っているとんがり帽子を外した。白髪のでも毛根が残ってることがよりウチの担任を深刻にしたが、そんなことはつゆ知らずに自身の帽子の中に手を伸ばす。

 そうして、「あったあった」と喜びながら何かを取り出した。


「タロットカード?」

「に細工を施したものじゃな。よく知っとるのぉ、ほれ、嬢ちゃん」


 血気盛んに手に持つカードを一直線状に投げる。危なげなくキャッチする篠崎さんはカードの表面を覗き込んだ。


「動物と、女の人?」

「お主を守ってくれる。肩身離さず持っておけ」


 説明が終わり帽子をいそいそと付け直す爺さん、すかさず俺は待ったをかける。


「おい、まだ終わってねえ」

「もとよりお主に話はない。用があったのはそちらの嬢ちゃんだけじゃぞ」

「いいから人の話を聞け!」


 怒気を出し睨みかける。面白そうにこちらに笑顔を向けてくる爺さんには得体の知れない悍ましさの感触を痛感していた。


「お前……人間か?」


 風が吹き終わり夕刻も鎮まりかけていた。発した言葉に対しての返答は、長い一息。


「人間じゃよ。わしもお主たちをここまで追いやった元凶もな」

「っ!」


 途端に輪郭線が薄くなる。瞬間移動、三度目にしてやっとその事実を信じることになるとは。

 突如として七色の光が現れ、爺さんは消える。


 直前、ある語句を発しながら。


「また会おう」


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