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第二十五話 動き出す

〈雲斎〉


「それってどう……?」


アタシの台詞にナガッチは動揺するように狼狽える。それをしっかりと見届けながらずっと黙っていた事柄をこの場に降下した。


「貴方、ストーカーはやめた方がいいわよ」

「は?」


 困惑というより驚嘆の顔を表す彼女に王手をかける。


「……アタシは貴方に突き放されて交友関係を失った。でも、何も貴方の汚ったない情報が入ってこないわけじゃない。それこそ登校日初日に西岡と篠崎さんが仲良さげに出てくるのを目撃したのが貴方だってこともね」

「……」

「まあ好きな人を見つめていたいのは分かるけど。話しかけずにずっと張ってるのは恐怖でしかないわ」


 さっきまでの威勢は何処へ行ったのだろう、ナガッチは黙り込んでしまう。やはり自身のプライベート事情は詮索されたくなかったというべきか。


「で、彼の好意が他に流れていくのを恐れた貴方は今日の朝、ちょうどいいポジションに立っていた那覇士さんを利用し、つむ…篠崎さんの悪評をクラスメイトの前で、西岡の目と鼻の先で彼女を潰した。どうせ、那覇士さんが困ってる家庭事情に手を貸すという名目で篠崎さんとの口論の事を聞き出したんでしょ。なんとなく予想がつ、」

「うるさい!!」


 説明口調となったアタシに、ナガッチは今まで見せたことのない形相で噛み付いた。


「あーしが西岡にどんだけ頑張ってきたかお前知っとるやろ! もう二年や二年! 色んな奴と協力したこれまでのアプローチが努力のカケラもないぽっとでの新人に持っていかれると分かればどんな姑息な手を使ってでも潰したいって普通思うやろ!!」

「篠崎さん、悲しんでたわよ?」

「知らんがな! 今までもそうしてきた、これからだってあーしの方針は変わらない。彼の存在があーしにとっての、」

「ヒーローであり続ける限り、ね」


 まだ友達であった頃、よく聞かされた謳い文句に思わず呆れてしまう。それほどナガッチが言うとは……と興味を持ったのが運の尽きだったのだろう。


 けれども、熱くなる彼女にアタシは冷酷に説き伏せることにした。


「悪いけど、西岡の眼中に貴方の存在はないわ」

「そんなわけない!!」

「本当よ。前は誰一人目に映してなかったんだけど、今はある人が彼を独占してるから」

「誰や、その相手は!」

「篠崎さんに決まってるでしょ」


 はぁと息を吐き、続けて単語を羅列する。


「西岡と篠崎さんが一緒に帰ったのをいち早く知ったのは貴方、けど運よくアタシもそれを聞きつけた。……ここからは誰にも話してなかった事実だけどこの際はっきりさせるわ。次の日彼を屋上に呼び出したのよ」

「は⁉︎、冗談もほどほどに!!…………え、まさか?」


 びっくりしっぱなしの腰をさらに抜かそうとする物事の上をゆく行動に顔色が青ざめ平常心が消えかえてていた。これで心が気に留めないアタシを見て皆どう思うのだろう。そう推し量ろうとし、嫌になって仕方なしに口を動かした。


「アタシに告白する勇気なんてあるならとっくに実行してるわ。単純に尋ねたかったのよ、彼が篠崎さんと何をしてたのか。誰かに見られてるという事実がバレると理解して尚のことだった」

「………それで、どうなった?」

「聞く前にうやむやにされた。ちょうど西岡はその時、篠崎さんの相談を受けて一人で待機してたのよ」

「相談?」


 聞き返すナガッチにアタシは半ばキレながら声を荒げる。


「貴方が今日潰した那覇士さんと篠崎さんとの話し合いよ! あれは初め、西岡君が友達を作りたいという篠崎さんの要望を叶えるためにコンディションを整えてあげたものだった!!」

「う、そ……?」

「聞きなさい。アタシが質問しようとした時点で既に西岡と篠崎さんの仲は良好。掛けてきた時間は貴方が優位に立てるかもしれないけど彼は一年の頃から貴方の思いに気づいてない、それどころか興味も持たれてないのよ。きっかけはアタシだけど、時間になっても此処に彼が来なかった時点で貴方の負けなの!」

「そんなことない!!」


 彼女は真実を拒むかのよう……いや、はなから真実と認めない態度を表す。そうして一段と大きな声でアタシに矛先を向けてきた。


「思いには気づいてないかもやけど、興味は持たれてとるわ!!」

「もう三ヶ月も彼と五分以上話してないくせに何言ってんだか……」

「それは西岡が恥ずかしかって、」

「思いに気づいてない人間がどうして恥ずかしがる必要があるの?」


 矛盾じゃん、と結びつかない言動を指摘するとアタシから視線をずらし、ドアに目を当てる。


「そこを退け」

「会話で勝てなくなったら力ずく。いいけど、教室に彼はいないわよ」

「ならどこや!」

「言う訳ないじゃない」


 自らも知らない事をあえて胸に隠して、彼女の行く手を阻む。このままでは何処までも彼女は探しに行ってしまうかも、そういう意味での策だった。


 だがその一刻に、ナガッチは不気味に笑い始め不快感のある人相で何かを唱えた。


「はは、そうかそうか。お前も、お前もあーしの邪魔をするんやな、こんだけ努力してるあーしの障害になるんやな」

「……何を言って、、」

「なら、ぼろぼろになるまであーしが利用させてもらうわ!」


 その直後、アタシは紙切れのようなものを取り出し瞳を大きく覗かせたナガッチ、に何かを…………、、


*****



〈謎の二人組〉


「嘘? 消えた、そんな馬鹿な」

「どしたミィ。何があった?」


 突然顔面蒼白になる少女を心配し、声をかける。だが次に聞こえてきた言語は彼であっても理解不能であった。


「ミィの探知から反応が消えたの!」

「冗談、ではなさそうじゃな。っ、ちゃんと目標を確認しとけばよかったのぉ。ミィ、原因はわかるか?」

「目標がやったわけじゃない。第三者からの妨害・・・?」

「ありえん。わしらの隙をつける奴なんぞ、数える程度しか居ないというのに」


 自身の先を越されたと、内心悔しがるがそう安々と言ってる場合ではなかった。すぐさまポケットに忍ばせたトランシーバーを取り、声をまくし立てる。


『報告じゃ報告。目標が捉えられなくなー』


 慌てる声が止まる。不自然に思った少女は顔を向けると、頭の抱えた老人がそこにいた。


「繋がらん…」

「え、?」

「上と連絡が取れん!」

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