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第十一話 不思議

「よし、今日の授業はここまで。お疲れー」


 号令と共に授業が打ち止めとなった。六時間目の現代社会が終了し、やっと一日の半分ほどの時間が過ぎ去る。荷物をロッカーに入れて席にもたれ掛かると今日のビックイベントがまだ開始されてないことを再確認。


 決行は今日の放課後。那覇士さんの部活が今週一週間ないことは中谷から確認済み…つまりこの期間が仲良くなる絶好のチャンス。


―――周りの雰囲気から察して那覇士さんは友達がそこまで多くない、だから新しい人間は拒まないはず。


 補足だが、篠崎さんはコミ症ではない。場のムードを握り消したとして、彼女自身から溢れる威圧的オーラを消してしまえば普通に会話が可能になる。(参考詳細は自分)


 那覇士さんは根っからの真面目気質で一年の頃から教室の鍵を借りて単独で自習をしている。下校時間はきっかり五時三十分。水泳部は活動日が特殊で彼女が勉強をしてる時は大抵他の部活は活動中なので、放課後誰かといることはまず無い。


 本日は篠崎さんが居残りを利用して、彼女たち二人しか存在しない空間を作り出させてもらう。それを俺が廊下から傍観しながら、もし何か不味い事が発生した場合、途中退場してもらう形だ。


 篠崎さんには、両者通じ合える取っ掛かりを見つけて掘り下げろと言っており共通の話題を共有した後、一緒に下校するという考えになっている。我ながら割と良い得策だ。


―――頼むぞ、上手く行ってくれ。


 俺が願いを生じさせてから約二分。担任が、六時間目の教師と入れ違いで教卓に立った。  

 生徒を見渡し特にどうってことない連絡事項を伝える担任。マジで二年生なのに遅刻はダメだとかそんな当たり前のこと誰でもわかってるだろ。


 無駄話は人をイラつかせる病原菌そのものだった。


「気を付け、礼」

「「「さようなら」」」


 全員が帰りの挨拶をする。掃除を適当にこなし、同じく当番の中谷と雑談をしながら机を運ぶ。清掃中にナガッチが話しかけてくるため嫌気が刺して仕方なかったが、空返事を刻んでいたら拗ねてとっとと帰った。


「なんか、色々と哀れだな」

「何がだ」

「いや別に」


 変な憶測はやめてほしい。

 

 先に中谷と別れ、疲れたように壁に立てかけた俺は、那覇志が鍵を受け取るのを見ていそいそと教室を出る。

 篠崎が上手くやれば五時半に二人は仲良く帰り道を共にすることになるが、雰囲気が悪くなったり拒否られたりした場合は俺が此処に入室して手助けするのを余儀なくされる。


 廊下で見張る予定だったが、流石に厳しそうなので何か有れば連絡を入れるように促した。それまでどこで時間を潰すか悩むが結局は校内をぷらぷらと散歩することに。


―――自習するのが適切なんだろうけどなー、勉強苦手だし。


 天井に吊られた時計を見る。時刻は四時過ぎで五時半まで一時間ちょい猶予が或る。とても校内探索だけでは潰せない気がするが……篠崎さんのためだ、どうにかしよう。


 図書館で時間を費やそうと別棟へ向かう。が、その数秒後、スマホのバイブ音がポケットを揺らした。

いくらなんでも早すぎだと、俺がスマホを取り出したところでその顔が疑惑へと変格する。


 まったく交流のない相手からのメッセージ。


―――どういうことだ……?


『屋上まで来てくれない?』


 


 

 送信元は、


 


 


 雲斎桜莉だった。

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